第35回庭野平和賞が決定 レバノンのアディアン財団に

レバノンの宗教団体と提携して実施された、市民生活を共に分かち合って支える意義を教える宗教教育プログラム ©Adyan

2008年に非営利・非政府組織として登録され、現在、主な活動は、「市民権と多様性マネジメント研究所」「コミュニティー」「メディア」「ラシャド文化ガバナンスセンター」の4部門を通じて行われている。各部門が連携するプロジェクトも多い。

この中で、11年からは、レバノンの教育・高等教育省など公的機関と提携し、「市民権と共生教育のための国家戦略」(NSCCE)を展開している。これにより、さまざまな背景を持つ人々のあらゆる権利を守る「非排他的市民権(インクルーシブ・シチズンシップ)」の概念を発展させ、教育カリキュラムを改定。教師へのトレーニングや、教科書に組み込むべき特別カリキュラムの開発に取り組んできた。また、これと並行して、13年からはシリア危機への対応として、シリア、レバノン両国に暮らす内戦で傷ついたシリア人のための「回復と和解構築プロジェクト」(BRR)を開始。和解に向けた宗教間対話と平和教育の機会を提供するとともに、同国の宗教指導者や活動家らによるネットワークを構築し、結束の強化に努めている。

NSCCEやBRRの活動について、国連グローバル教育担当特使のゴードン・ブラウン元英首相は、個人やコミュニティーの間の違いを尊び、共生の大切さを学生や市民に教えていることを称賛。さらに、宗教間の平和と和解に焦点を当てていることを挙げ、この活動は、イスラーム国(IS)を名乗る「過激主義者のプロパガンダに対する解毒剤だ」と高く評価している。

一方、「メディア」部門では、ツイッター、フェイスブックの両社と協働し、ウェブサイト上での暴力過激主義に対抗。宗教の多様性や信教の自由について取材するレバノンやイラク、ヨルダンのジャーナリストの養成に力を注ぐ。

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