第35回庭野平和賞が決定 レバノンのアディアン財団に

異なる宗教を信仰する5人によって設立されたアディアン財団 ©Adyan

「第35回庭野平和賞」の受賞団体が、レバノンのNGO「アディアン財団」に決定した。公益財団法人「庭野平和財団」(庭野日鑛名誉会長、庭野浩士理事長)は2月19日、京都市内のホテルで記者発表会を開き、席上、庭野理事長が発表した。アディアン財団は、シリア内戦で傷ついた人々を支える和解構築プログラムの開発をはじめ、国内外で宗教対立を超えた和解と、健全な市民社会の構築に取り組んできた。贈呈式は5月9日、東京・港区の国際文化会館で行われ、受賞団体に賞状、顕彰メダル、賞金2000万円が贈られる。

庭野平和賞は、宗教的精神に基づく世界平和の推進に顕著な功績をあげた個人または団体に贈られる。世界の識者600人が推薦した候補者の中から、庭野平和賞委員会(宗教協力や平和活動に取り組む宗教者、識者ら9人で構成)の厳正な審査を経て選出される。

1943年にフランスから独立したレバノンには、18の宗派が存在するといわれる。75年、キリスト教の一部勢力と、パレスチナ解放機構(PLO)を含むイスラームの一部勢力との間で内戦が発生。他の宗教宗派の関与、隣国のシリアの介入やイスラエルの侵攻によって泥沼化した内戦は90年まで続いた。2006年には、同国のイスラーム・シーア派武装組織「ヒズボラ」とイスラエルとの間で紛争が起こり、イスラエル軍の侵攻を受けた。

創設者に名を連ねるファディ・ダウ理事長(右)とナイラ・タバラ副理事長 ©Adyan

隣国からの侵攻や宗教対立の歴史を有する同国で、対立を乗り越え、多様性を豊かさとして尊重する共生社会の実現を目指し、06年、アディアン財団が生まれた。創設者は、マロン典礼カトリック教会の神父で大学教授のファディ・ダウ師(現理事長)、イスラーム学専門の大学講師であるナイラ・タバラ氏(副理事長)ら異なる宗教を信仰する5人。

同財団は、宗教が対立の“道具”とされている状況に対し、平和や共生といった諸宗教の根源的な教えを伝え、自己と他者の宗教を正しく理解する取り組みを推進してきた。多様性を重んじ、平和のために精神的な連帯を築くことが宗教の役割との考えに基づくものだ。設立の翌年から、毎年10月の最終土曜日には、諸宗教者の集いを実施。共通する価値観を見いだして分かち合い、霊性に基づく精神的な連帯を深めてきた。

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