笑トレで元気に――健康と幸せを呼ぶ“心の筋トレ”(11) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子 (動画あり)

イラスト/中村晃子

『やりたいことを大切にする』

笑いは健康に良い影響を与えるということは、昔から知られていました。でも、「人さまに笑われることがないように」と育てられ、笑うことは不真面目だという思い込みを持って成長した人も少なくないのではないでしょうか。そうした人にとって面白くなくても笑うことは、難しいのだと思います。

この「思い込み」は、失敗にもつながるやっかいなものです。私はいくつかの大学で「笑い学」を教えていますが、ある大学で思い込みによるちょっとしたミスが起きました。2020年に社会福祉系の実践授業で、「傾聴」として「笑い学」を教えてほしいという依頼があり、今年も同じと思いました。しかし、21年から「人間関係力向上ワーク」として心理学の先生が担当する「傾聴」の授業が加わっていて、今年は私の「笑い学」の中で傾聴を入れる必要がなかったのでした。

2年ぶりの授業の直前にそのことに気づき、どうするべきか迷いました。ただ、前回の講義が学生からの評判が大変良かったのと、私が行うのは心理学ではなく、経営コンサルタントの赤羽雄二さんが開発した課題解決の手法としての傾聴(アクティブリスニング)なので、重複したとしても、学生に不利益にならないと判断し、予定通り実施しました。

やり方は、3人一組となり、「語り手」「聞き手」「オブザーバー」に分かれて、3分間、会話をします。そこで分かったことは、若い大学生たちは、語り手として自由に話すのが苦手ということでした。聞き手は、相づちや質問をするなど、話が弾むように工夫し、その様子をオブザーバーが観察するというのが普通の会話と違う部分です。話すテーマは三つ。その中には「なんでも好きなことを話す」というお題も含まれていたのですが、たった3分間の会話なのに、話し続けるのが難しいようでした。他の大学でも同じワークをやりましたが、「おしゃべりは楽しいけれど、自由に話せと言われたら、何をどう話していいのか分からなくなる」と言うのです。

近年、日本では少子化が進み、一人っ子の家庭が増えています。一人の子供を両親と祖父母とで絶えず注目し、大切に育てているように見えてその実、大人からの過大な期待に応えなくてはと、理想の“子供像”に自分を押し込めて生きていたりしています。その結果、叱られないように、ご褒美がもらえるようにと、大人の顔色を見て上手(うま)く立ち回る要領の良い子が増えているのです。

「正しい」や「あるべき姿」を求め過ぎることが、少子化につながっていると言ったら大げさでしょうか。それはまた、自立しないといけない年齢になっても、自分の意見や主張、欲望を自由に表現することを苦手に感じる人が増えている原因の一つかもしれません。

人口減少は、大きな社会課題です。今のお母さんたちは、電車や公共の場所で子供が泣くのを恐れています。満員電車で赤ちゃんが泣いたら「うるさい。泣かせるな」「こんなところに幼い子を連れてきて」と非難の目を向けられるからです。少子化で子供に慣れていない人が増え、社会の寛容性が下がってきているのでしょう。子供だけではなく大人も、欲しいものは欲しいと言えて、やりたいことに挑戦できる。そんな優しく寛容な社会を目指したいものです。

子供は遊びの天才です。子供の遊び心を大切に育てるために、今回は少々お行儀の悪い笑いの体操にチャレンジしてください。スイカの種を遠くに飛ばす「スイカの種飛ばし笑い」と、水たまりに飛び込んで、水を跳ねさせて笑う「水たまりベチョベチョ笑い」です。

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プロフィル

たかだ・よしこ 兵庫・神戸市生まれ。2009年にインドで笑いヨガを学び、帰国後に日本笑いヨガ協会を設立した。笑いは呼吸であると考え、一生「健康」と「ごきげん」を手に入れられる笑トレや笑いケアを開発し、高齢者のケア現場や企業のストレスケアの分野でも指導・講演活動を行っている。日本応用老年学会理事。著書に『ボケないための笑いヨガ』(春陽堂書店)、『大人の笑トレ』(ゴルフダイジェスト社)など。