笑トレで元気に――健康と幸せを呼ぶ“心の筋トレ”(10) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子 (動画あり)

イラスト/中村晃子

『本当はどうしたいのか』

時間というのは、過去から現在、さらに未来へ流れると考えるのが一般的です。これまでやってきたことの積み重ねの結果が、今であるという事実です。しかし、時間は未来から現在、過去に続くという見方もあります。それは、将来こうありたいという理想の姿に向かって、逆算的に行動していく考え方です。

幼い子供に夢を聞くと、サッカー選手やアイドル歌手という答えが返ってきます。中学生はおそらく、医師、アナウンサー、イラストレーターといった人気職業を答えるでしょう。さらに成長し、進路を真剣に選ぶようになる頃からは、医師になりたい人は医学部に合格しやすい高校を選び、イラストレーターを目指すならば美術部に入り、アナウンサー志望の人は専門の塾に通います。

人は成長するにつれ、未来への具体的な行動を取るようになります。つまり、未来から見た現在であり、時間は未来を基準として現在に流れてくるという考え方も成立するのです。

一方、過去はどうかと疑問を持つ人もいるかもしれません。しかし実は、過去とはとても流動的で、自分の意志一つでいくらでも変えられるものでもあります。

以前、私には学歴コンプレックスと女性差別の悩みがありました。高専の建築学科を卒業後、新卒で入社したテントメーカーで技術職として働いていました。しかし、大卒の後輩の方が高い給料をもらっていたり、女だからとやらせてもらえない仕事があったりと、いつも不満を抱えていたのです。25歳で起業してからも、20代の間はその悩みは続きました。実力さえあれば学歴は関係ない、女だからとバカにされたくない――。そんな思いで当時の私は頑張りました。負けん気が強い側面もありますが、ただ、やりたいと思った仕事を一生懸命に取り組んでいただけなのです。

そして気づくと、私は40代になって大学院に通い、日本初の老年学コースで修士号を取得していました。老年学は高専時代から学びたいと思っていたことですが、日本にはありませんでした。もし、学歴コンプレックスがなかったら老年学を学ぶことはなかったでしょうし、大学院で得た人脈もありませんでした。

また、テントメーカーで働いていた当時は、女性技術者はまだ珍しく、チャンスが巡ってきたことが何回もありました。コンプレックスに感じていた学歴が足りないこと、女性であることは、マイナス要因ばかりではなかったと、今なら分かります。

このように、過去とは現在から見た「記憶」です。だから、現在の状態によって、自分の意志で過去はいくらでも書き換えができるものなのです。過去の事実は変えられませんが、その解釈を変えることは、「今」次第なのです。

今、自分は何をやりたいのか、何が欲しいのか。それはなぜなのか。現在の自分の心と向き合い、臨むものにフォーカスし、行動することが何よりも重要なのです。そうすれば、過去を悔やむことも、未来を憂えることも減るはずです。自分らしく生きるために、今日、今この瞬間を大切にすることで、ストレスは激減するでしょう。

そこで今回の動画で紹介するのは「ウミガメ笑い」と「おねだり笑い」です。浦島太郎に時間旅行をさせたウミガメに乗って、私たちも旅をしましょう。また、自分らしくいるために、人の協力は不可欠です。自分の欲しいものを、しっかりとおねだりしちゃいましょう。

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プロフィル

たかだ・よしこ 兵庫・神戸市生まれ。2009年にインドで笑いヨガを学び、帰国後に日本笑いヨガ協会を設立した。笑いは呼吸であると考え、一生「健康」と「ごきげん」を手に入れられる笑トレや笑いケアを開発し、高齢者のケア現場や企業のストレスケアの分野でも指導・講演活動を行っている。日本応用老年学会理事。著書に『ボケないための笑いヨガ』(春陽堂書店)、『大人の笑トレ』(ゴルフダイジェスト社)など。