笑トレで元気に――健康と幸せを呼ぶ“心の筋トレ”(6) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子 (動画あり)
イラスト/中村晃子
『継続のコツ』
前回は、自分の意志で心地良い環境をつくることが大切、というお話でした。しかし、いくら新築で素晴らしい家を手に入れても、メンテナンスをしなければボロボロになるように、良い環境をつくった後は、その状態を保てるようにお手入れを継続的に行わなければなりません。物理的な面だけではなく、日々の生活では何事も継続できないと、成果は得られません。今回は、継続の秘訣(ひけつ)についてお伝えします。
ダイエット、勉強、運動、趣味、家事、体に良い食生活――。これらを「絶対やりきる」「とにかく頑張り努力する」と決意する人は少なくありません。しかし、これ、残念ながら失敗のもとで、意志の力に頼るとうまくいかないのです。
さらにやっかいなのは、失敗すると「自分はダメだ」と感じてしまうこと。意志の力に頼ると、うまくいって当たり前と感じるため、ダメな自分に直面することで自信を喪失するのです。それでは、どうすれば継続できるのか? それは、取り組んでいる事柄を続けるための環境を整えるということです。
例えば、ダイエットで考えてみると、
・お菓子は身の回りに置かず、もらったらすぐ他の人にあげる
・食材を買い過ぎない、料理を作り過ぎない
・体重を毎日測るため、目につく場所に体重計を置く
・計測した体重を記録して、体重の増減を可視化する
などで自分ができることを組み合わせるのです。
私は2009年1月から毎朝、「朝の笑トレ」をやっています。インドで笑いヨガティーチャーの資格を取得した時、先生から「あれこれ頭で考え過ぎず、40日間朝20分笑いなさい」と言われ、40日間だけは、何が何でも笑おうと思いました。最初は家でインドの笑いヨガ教材のDVDを見ながら笑いました。たった一日で家族からうるさいと言われてしまったので、翌日から近所の根津神社(東京・文京区)に行きました。そして、健康志向の強い人が集まっている朝のラジオ体操後の朝6時40分から20分間、笑おうと考えました。
この時間を決めたことが、環境を整える第一歩だったと後から気づきました。毎日やっていると、わずかな人数ながら、一緒に笑う仲間ができました。今度は、彼らが待っているので、やめられなくなりました。そして、私自身がどんどん健康になり、朝寝坊だった習慣が早起きに変わって、肩こりもなくなりました。自分へのメリットが明らかになると、さらに継続しやすくなったのです。
その後、引っ越して根津神社に行けなくなり、家で一人で笑っていたのですが、コロナ禍がきっかけでSNSでの配信を始め、今では毎朝6時50分から7時まで、笑っています。これ、起きてすぐやるのでスッピンです。全国の人に寝起きの素顔を見られるのはさすがに恥ずかしいのですが、80人以上と一緒に笑い、一日300を超える人が見ながら笑ってくれていると思うとうれしくなり、私がどう見られるかより大切なことを共有できていると感じられるので、今も続けられています。
時間を決め、場所を固定し、仲間をつくり、記録して成果を確認する。これが、継続の王道です。揺らぎやすい意志の力に頼らないというのが、とても大事なポイントです。
料理が好きな人にとって、毎日1杯の味噌(みそ)汁を作るのは簡単なこと。しかし、料理が不得手な人にとっては、良いと分かっていても大変なことです。「あーできなかった」と嘆くより、「どのようにしたら、できるのか」にフォーカスしてほしいと思います。インスタントでもいいし、まとめて作って冷凍するのもいいかもしれません。今月の動画は、皆さんが毎日必ずやっている「歯磨き」と「うがい」を笑いの体操にしたものです。毎日の習慣の後に、少し笑う時間を足してみてください。
プロフィル
たかだ・よしこ 兵庫・神戸市生まれ。2009年にインドで笑いヨガを学び、帰国後に日本笑いヨガ協会を設立した。笑いは呼吸であると考え、一生「健康」と「ごきげん」を手に入れられる笑トレや笑いケアを開発し、高齢者のケア現場や企業のストレスケアの分野でも指導・講演活動を行っている。日本応用老年学会理事。著書に『ボケないための笑いヨガ』(春陽堂書店)、『大人の笑トレ』(ゴルフダイジェスト社)など。