笑トレで元気に――健康と幸せを呼ぶ“心の筋トレ”(4) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子 (動画あり)

イラスト/中村晃子

『時間とは命のこと』

産婦人科医で日本笑い学会副会長の昇幹夫先生は、「笑いと健康」の著名な講師です。彼の講演にこういうものがあります。

「私たちは毎日8万6400円のお金をいただきます。それは、その日のうちに使い切らなければ、明日に持ち越すことはできません。使わないと、午前0時に自動的に0(ゼロ)になってしまいます。でも、次の日になると、また8万6400円のプレゼントをいただくことができるのです」

これは、時間の話です。60秒×60分×24時間=8万6400秒というわけです。首相や大実業家であろうと、一般市民であろうと、みんな公平に毎日8万6400秒が与えられています。これは、私たちが天から与えられたものです。

「時間とは、人間の持っている命のこと」と言うのは、小中学校でも命の授業を続けてきた医師の日野原重明先生です。2017年に105歳で亡くなる数カ月前まで仕事を続けられました。

私たちは、生まれた日にはもう、この世を去る日が必ず来るという決定事項を背負っています。それはある意味、余命宣告されているのと同じことではないでしょうか。平均寿命より10年、20年長く、あるいは120歳まで生きるとしても、命に限りはあるのです。

一日の中では睡眠も必要ですし、食事やトイレといった避けられないパーソナルな時間も必須です。それらの時間を差し引くと、8万6400円(秒)ではなく、3分の2としても、実質5万7600円(秒)くらいになります。

このお金(時間)は有限です。残しても、先に繰り越すことはできません。有限の時間を誰と、何をして、どのように使って過ごしたいのか、新しい年に向けて考えてみたいものです。それは、人それぞれ違うものでしょうし、みんな違ってみんな良いのです。

私にとって良い時間の使い方とは、笑ってごきげんに暮らすことです。周りの人を笑顔で幸せにしたいと考える人たちと時間を共有して、仕事をすることです。人間である限り、不平不満や愚痴は出てきます。どんなに注意していても、嘆き悲しむ出来事を経験することになります。しかし、たとえ何があったとしても、笑うことで、前を向く元気が湧いてきます。笑いには、気持ちをリセットする効果があるからです。

漫才、落語、コメディー映画など笑う方法はたくさんありますが、一番いいのは人と会話することです。電話をかけたり、直接会ったりして、愚痴を聞いてもらう友人を持つことは、笑い溢(あふ)れる人生には大切なことです。また、環境を変えることも、気持ちのリセットには大きな効果があります。

今回は、遠くまで飛んでいく「飛行機笑い」と、電話で話したつもりになって笑う「携帯電話笑い」をやってみましょう。与えられた命の時間の中には、泣くことも笑うこともあります。面白いかどうかを判断するのではなく、「無条件で笑う」ことが重要なのです。そうしないと、笑うための筋肉が衰え、笑えなくなってしまいます。笑トレで、笑うための筋肉=ゲラゲラ筋を鍛えて、一緒に笑い合える家族や友人を大切にし、人生を豊かにする旅をしたいものですね。

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プロフィル

たかだ・よしこ 兵庫・神戸市生まれ。2009年にインドで笑いヨガを学び、帰国後に日本笑いヨガ協会を設立した。笑いは呼吸であると考え、一生「健康」と「ごきげん」を手に入れられる笑トレや笑いケアを開発し、高齢者のケア現場や企業のストレスケアの分野でも指導・講演活動を行っている。日本応用老年学会理事。著書に『ボケないための笑いヨガ』(春陽堂書店)、『大人の笑トレ』(ゴルフダイジェスト社)など。