大人のSNS講座(1) 文・坂爪真吾(一般社団法人ホワイトハンズ代表理事)

画・はこしろ

インターネットの魅力と魔力

私は現在、8歳の長男と6歳の次男、二人の子育て真っ最中です。子どもたちが今一番好きな娯楽は、アニメやテレビゲームではなく、インターネットの動画共有サービス「YouTube」です。自分たちでゲームをするのではなく、他の人が作ったゲーム実況の動画をYouTubeで見ることに熱中しています。

昭和の家庭では、きょうだい喧嘩(げんか)の主戦場はテレビのチャンネル争いでしたが、令和の家庭では、YouTubeのチャンネル争いへと移り変わっています。現在39歳の私が子どもの頃は、まだインターネットは普及していませんでした。メディアの王様はテレビであり、娯楽の王様はスーパーファミコンやプレイステーションなどの家庭用テレビゲームでした。

しかし現在では、そのいずれもYouTubeに王座を奪われている状況です。ゲームをするよりも、ゲーム実況を見る方が面白い……という感覚、昭和生まれの私には今一つ理解できませんが、子どもたちが夢中になって見ているのは事実です。

ゲーム実況動画から様々な語彙(ごい)や文化を学んでいる様子を見ると、最初からインターネットとスマホのある環境で育った「YouTubeネイティブ」の世代が生み出す文化は、私たちの世代からは想像もつかないものになるのでは、と感じています。

テレビとインターネットの違いは、双方向性にあります。テレビの場合、一般人が気軽に出演することはできません。自分で番組を作って放送することもできませんし、番組に登場している芸能人と話すこともできません。

しかしYouTubeは自分で動画を作って世界中に配信することができ、視聴者とコミュニケーションをとることもできます。テレビ番組のような時間的制約もなければ、スポンサーへの配慮も不要なので、ガイドラインに違反するような性的・暴力的・反社会的なコンテンツでない限り、自由に発信することができます。

こうした双方向性と自由さがあるために、YouTubeには子どもたち(もちろん大人も)をひきつける圧倒的な力があります。視聴者と発信者の境目がなくなることで、娯楽の面だけでなく、ビジネスや政治経済、文化や芸術、報道などの分野においても、これまでのメディアでは取り上げられなかったようなニッチなテーマが取り上げられるようになり、情報の多様性が増大しました。

しかし、インターネットのSNS上に流れる情報は、必ずしも正確なものであるとは限りません。今回のコロナ禍においては、在宅勤務(テレワーク)やステイホームが奨励される中で、SNSの情報に接する機会が大幅に増えました。その結果、根拠の不確かな情報やデマに振り回された人たちが、怒りと不安に駆られて感情的・攻撃的な投稿を繰り返すような状況が生まれ、SNS上で誹謗(ひぼう)中傷を受け続けた有名人が自ら命を絶ってしまう事件も起きています。

こうした状況の中、私は今年7月、SNSで怒りを燃やすことがやめられない人たちと、その背景にある社会課題を分析した『「許せない」がやめられない』(徳間書店)を刊行しました。

まだまだ終わりの見えないコロナ禍、あらゆる仕事・会合・イベントがオンラインになっていく流れは、来年以降も続くと予想されます。そうした中で、SNSに渦巻くリスクを避けるためのリテラシーを身につけることは、自分の身を守るためにも、大切な人を傷つけないためにも、必須になるはずです。

この連載では、全12回にわたって、SNSと上手に付き合う方法を考えていきます。SNSで起きるトラブルの事例や誹謗中傷する人の心理、SNSが情報のインフラになった現代社会とどのように付き合っていくか、といったテーマを取り上げていきます。最後までお付き合い頂けると幸いです。

※次回は、「ネットは怖い」というネガティブはどこからくるのか(スマホ依存、SNSの誹謗中傷など)に続く

プロフィル

さかつめ・しんご 1981年、新潟市生まれ。東京大学文学部卒業。新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障がい者に対する射精介助サービス、風俗店で働く女性のための無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。著書に『「許せない」がやめられない SNSで蔓延する「#怒りの快楽」依存症』(2020年・徳間書店)など多数。