TKWO――音楽とともにある人生♪ トランペット・奥山泰三さん Vol.3

奏でるのが「人」だからこそ

――演奏家としての夢が広がりますね。一方で、指導者として奥山さんが、大切にしていることは何でしょう?

指導する際に、若い人に伝えているのは、とにかく、「よく聴く」ことですね。一生懸命に演奏することは大切ですが、そればかりだと、耳で聴くことに意識が向きません。音楽を判断するのは「目」ではなく、「耳」ですから、自分の楽器から出る音も、相手の楽器からの音も同時に聴き取れるよう、奏でられる音を集中して聴くことが一番大切だと思います。

それから、演奏に対しても何にしても、絶対に諦めないこと。「できるようになれたらいいな」ではなくて、「必ずできるようになる」との強い思いで練習すると、本当にできるようになるよと、普段からそう教えています。

さらに、「演奏がうまくなりたいと思うのならば、まずは人間性を磨きなさい」と伝えています。演奏はその人の感性の表現であり、演奏にはそれがにじみ出ますから、いろんな人に出会い、さまざまなものを見て、聴いて、感性を磨くことが重要です。そうやって心が豊かになればなるほど、人間性が養われて表現も豊かになり、良い音楽性も引き出されてくると思います。

だから、音楽を通して自分という存在を表現できるという点で、音楽とは人生そのものだなとつくづく感じています。その点で、佼成ウインドオーケストラは全体的に良い人間性を持った人たちが団員として在籍しているので、音楽的にも非常に良い楽団だと自負しています。

――吹奏楽や佼成ウインドのファンに向けて、メッセージをお願いします

ファンの皆さまには、いつも佼成ウインドを応援して頂いて、本当にありがとうございます。わが楽団は再来年、60周年を迎えます。このように、だんだんと歴史のある楽団に成長していく中で、今、まさに団員の世代交代が行われ、本当に宝物のような若くて上手な奏者たちが続々と集まってきています。演奏のクオリティーもますます上がっていくことで、今後も吹奏楽界をますます牽引(けんいん)できる楽団に発展していくことと思いますので、応援をよろしくお願いします。

プロフィル

おくやま・たいぞう 兵庫・神戸市に生まれる。武蔵野音楽大学卒業。1984年、第1回日本管打楽器コンクールに入選し、86年に東京佼成ウインドオーケストラに入団後は、同ソリストとしてマルチェロの「協奏曲ニ短調」はじめ多数の楽曲を全国各地で演奏してきた。2008年にDVD「Winds 楽器別上達クリニック『トランペットマスター』」をリリース。現在、昭和音楽大学講師、日本トランペット協会常任理事などを務める。