男たちの介護――(17) 遠距離の老老介護 母と穏やかな時間を過ごすために

半月に一度帰るとはいえ、母親を2週間も一人にすることは、もちろん気がかりだった。自宅にいても心配は尽きず、離れて暮らすことに引け目を感じる時もあった。だが、生家の近所に住む弟夫婦や親戚が、「ばあちゃん、どうだね」と、代わる代わる母親を訪ね声を掛けてくれることが安心につながった。

生家まで、車で片道8時間。助手席に座る妻のともよさんと一緒に歌謡曲を口ずさみ、約500キロの道のりを走る。時折、ともよさんに運転を交代してもらえるのも心強い。「道中、気をつけて」と心配する母親の言葉を心に留め、2時間おきに休憩を取ることも忘れなかった。

生家では、カレンダーの日付を数えながら、きよさんがそんな息子夫婦の帰りを待ちわびる。「一人暮らしの高齢者世帯への支援」を受けるものの、週1回のデイサービスへの参加と配食サービスを利用するだけで、要介護認定などは受けていない。そればかりか、約13平方メートルのビニールハウスと、近隣に広がる800平方メートルの畑を今も管理するほどの元気さだ。

それでも、農作業服に着替えたきよさんが、手押し車を押し、約70メートルの坂道を二度ほど休みを挟みながら、ゆっくりと畑へ向かう姿を見ると、仲田さんは母親の老いを感じる。元気に動けるのが当たり前と思っていた錯覚と、老いを受け入れたくない自分の気持ちにも気づいた。だが、畑に一歩入れば92歳の母親は、仲田さんの農業の“先生”である。うねの作り方や苗を植える間隔も見てまねる。そうして今、この時間を大切にしたいと思うのだ。

「風邪をひかんように。食べ過ぎないように」と心がける92歳のきよさん。71歳の仲田さんは、「母を見送るまでは倒れない」ことが目標だ。「地元と生家の生活、二つの人生を歩めることが今、何より有り難い」と、遠距離の老老介護を仲田さんは楽しんでいる。

※記事中の人物は、仮名です