男たちの介護――(5) 認知症の母との二人暮らし 心折れそうになりながら 

同じ悩み抱える人に寄り添い

玄関の郵便受けに、一枚のチラシが入っていた。「介護で悩んでいませんか?」。そう書かれていた。毎月第4木曜日、地域の福祉センターに男性介護者が集うサロンの紹介だった。

母・智代さんの介護に限界を感じていた。藤堂靖之さん(69)は集いに参加することにした。介護経験者など15人が顔を合わせ、それぞれの体験について語り合っていた。「介護をするようになったからといって急に退職できない」「衣服が室内のどこにあるか分からない」「女性用下着の購入や排せつの世話が苦痛です」……。

介護のつらさを経験している人たちと話していると、胸のつかえが取れたように感じた。苦しい心のうちを話しながら大泣きしていた人が、すっきりとした笑顔で帰っていくのも印象的だった。

その場には“共感”があった。介護の重圧に押しつぶされそうになっていた藤堂さんにとって驚きの光景だった。24時間ずっと介護し、一人で頑張り続けるのは無理がある――冷静に振り返ることができた。

共感してくれる仲間がいる。これも重要だ。つらくなったらここに来て思いの丈を話せばいい。そう思えたら心が軽くなった。

〈立て直しが必要だな〉。藤堂さんは痛感した。今まで行ってきた母への介護を見直し始めた。藤堂さんは介護サービスプランも、ケアマネジャーを通じて策定し、デイサービスを週に3、4回利用するようになった。