男たちの介護――(2) 50年間連れ添った妻が脳腫瘍に 突然始まった介護

余命宣告から3カ月が過ぎた頃、転院を迫られた。自宅から自転車で10分の距離にある病院に決まり、一日の生活の流れも変わった。午前と夕方は病院でユキさんと時間を共にし、午後は趣味のグラウンドゴルフに出向く。後ろめたい気持ちもあった。ただ、張りつめてばかりいては、優しく接することができないことも分かっていた。少しでも心のゆとりを持ち、限られた大切な二人の時間を過ごしたかった。

ユキさんは、徐々に口から食べ物を摂取できなくなり、鼻からチューブを通し栄養を補給するようになった。心がけたことは、つらさを和らげてあげることと、佼成会が大好きな妻に機関紙誌や庭野日鑛会長の著書『こころの眼(まなこ)を開く』(佼成出版社)を毎日、耳元で読み聞かせることだった。

もうすぐ最期の時が来る。そう覚悟した。ユキさんが倒れてから約2年、平成26年12月12日、病院から電話が入った。ユキさんの容体が急変したのである。暖かい朝だった。息を引き取る最期を家族でみとることができた。77歳だった。

墓は家の近くにある寺に建てた。10日に一度は通い、ユキさんと話をしてくる。自宅には、ユキさんの得意料理だったひじきご飯を持って訪ねてくれるサンガ(教えの仲間)もいる。寂しい時、サンガがいてくれることは心強い。「教会へ夫婦で通っていればユキもどんなにか喜んだことでしょうね」。小さな後悔に胸が痛むけれど、〈心の中に妻がいる〉とも思えるようになった。

「介護の最中、どうにもならないほど大変な時もありました。それを乗り越えられたのも、親身に話を聞いてくれたサンガのおかげさまです」

※記事中の人物は、仮名です