TKWO――音楽とともにある人生♪ ピッコロ・丸田悠太さん Vol.2

――ピッコロを吹くようになったのは、いつからですか。きっかけは?

18歳の時です。大学1年生になり、フルートの演奏に生かせる技術、経験、音楽的な理解を高めるために、何でもやって吸収していこうと考えました。その一つが、ピッコロへの挑戦でした。

ピッコロは、フルートと兄弟姉妹のような関係で、フルートと同じ指の動かし方で演奏します。形はピッコロの方が短く、細く、フルートよりも1オクターブ高い音が出るのが特徴です。フルートの「移高楽器」になります。

先ほど、この二つの楽器は同じ指使いだと話しましたが、ピッコロは小さい分、指使いや息の吹き込みが難しくなるので、フルート奏者の中には、ピッコロに対して苦手意識を持つ人が少なくありません。音量のコントロール一つとっても、繊細な息遣いが必要です。特に、音量を絞って一定の音色を奏でることは、初めは難しいと思います。しかし、音量の調節にシビアなピッコロの音色をうまくコントロールできるようになると、その技術はフルートの演奏にも生かすことができます。

ピッコロは、オーケストラを構成する全ての楽器の中で高音域の旋律を担うことの多い楽器です。高音は人の耳に聞こえやすいものの、注意しないと目立ち過ぎてしまいますし、演奏の邪魔になることもあります。そうした特徴に意識が向くと、演奏する曲や楽団の状況によって、この部分は少し周りの音と溶け合った方がいいなとか、今は際立つようにグッと前に出るように吹こうといったことを考えるようになります。ピッコロを演奏することで、場面ごとに判断する力が養われたように思いますね。

僕は今、佼成ウインドでピッコロパートを任されていますが、一人の演奏家としてはフルートも演奏しますので、自分にとっては、どちらも大切な楽器です。

――丸田さんは、さまざまな材質でできたピッコロ、フルートを、演奏ごとにかえていると聞きました

演奏曲や会場に合わせて、それぞれの楽器が持つ個性を生かして、より良い演奏を披露したいですからね。僕は普段、フルートは金属製、ピッコロは木製を選ぶことが多いのですが、金属製と木製とでは、音の響き、音色が違います。金属製の方が鋭い音を奏でるように思われるかもしれませんが、実は、金属製の方が柔らかく、艶(つや)のある音がして、木製の方が太い音が出ます。加えて、僕の場合は材質の違ういろいろな種類の楽器を吹くことで、その特性に合わせた演奏の技術や経験を得たいと思って取り組んでいます。

今日は、木製のフルートと銀製のピッコロを持ってきています。このピッコロは非常に貴重なもので、実は、佼成ウインドの元フルート奏者で、定年後の現在は佼成ウインドの総務を務めている牧野正純さんから譲って頂いたものです。

アメリカのパウエル社製で、世界に26本しか存在しないとか。牧野さんから1年ほどお借りして吹かせて頂いていたのですが、音の感じから楽器のたたずまいに至るまでなんとも言えず、良いのです。吹いていて、楽しくて、どうしても欲しくなってしまって(笑)。無理を承知で、牧野さんに譲って頂けないかとお願いしたら、「丸田君ならいいよ」って言って頂きました。牧野さんと共に歩んでこられたこの楽器は、佼成ウインド歴が僕より長い、大先輩です。

プロフィル

まるた・ゆうた 新潟市出身。フルートを榎本正一、浅利守宏、大友太郎、佐久間由美子の各氏に師事する。国立音楽大学を首席で卒業、矢田部賞受賞。第7回JILA音楽コンクール管打楽器部門第2位。東京ニューシティ管弦楽団を経て現在、東京佼成ウインドオーケストラのピッコロ&フルート奏者、副コンサートマスターを務める。昭和音楽大学、洗足学園音楽大学非常勤講師。

公式ブログ“笛吹きの雑記帳” http://blogs.yahoo.co.jp/fuefuki_yuta_lanevo4g63turbo