TKWO――音楽とともにある人生♪ アルトサクソフォン・林田祐和さん Vol.2

一音一音に思いを込めて

――弦楽器を中心としたオーケストラでは、サクソフォンをあまり見かけることはありませんが

そうですね。たまに使われることもありますが、それでも、ほとんどはソロでの登場になります。よく知られる楽曲では、「ボレロ」や「ロミオとジュリエット」などで、耳にした人も多いと思います。先ほどもお伝えした通り、サクソフォンは音色の幅が広い楽器なので、他の楽器と違って、「サクソフォンといえばこの音」というのがイメージできないみたいです。なので、万能であるがゆえに、楽器の特徴を出したい作曲家からすると、扱いづらい楽器なのでしょうね。

それでも、サクソフォンが入った曲は、近代的なクラシックには数多く存在します。サクソフォン奏者が奏でる音色は一人ひとり違うため、クラシックにおいては、作曲者は「特定のサクソフォン奏者の音」をイメージして曲をつくることがほとんどです。それくらい奏者によって特徴がありますから、よくサクソフォンの音を聴いてみてください。サクソフォンの魅力をより一層感じられ、楽しめると思います。

――サクソフォンの魅力と言えば、昨年の4月30日にテレビ朝日系列で放送された「題名のない音楽会」での佼成ウインドの皆さんの演奏が好評でした

番組の中で演奏された「宝島」は、サクソフォンの魅力を前面に押し出した、特別にアレンジされた曲でした。私たちのゲストとして司会の石丸幹二さんがアルトサクソフォン奏者として登場され、見せ場でソロを吹いてくださいました。次いで、佼成ウインドのサクソフォンパートの4人でソロのバトンをつなぎ、最後は4人で一緒にハーモニーをつくった最高の演奏でした。

あれは佼成ウインドだからこそできた演奏だったと自負しています。もちろん、格好良いと自ら言ってしまうんですが、一音、一音に命をかけ、思いを込めて音の重みを表現し、聴く人を「ハッ」と魅了させる演奏だったのではないでしょうか。一音、一音を大切にするというのがやっぱり大事なんですよね。

プロフィル

はやしだ・ひろかず 1981年、宮崎・日向市生まれ。東京藝術大学大学院を卒業。「クローバー・サクソフォン・クヮルテット」のソプラノサクソフォン奏者として、キングレコードより「CLOVER」、「Precious」(レコード芸術特選盤、音楽の友推薦盤、読売新聞特選盤)をリリースした。2005年に第22回日本管打楽器コンクールで第1位に入賞している。