【グリーフサポートステーション「サンザシの家」代表・藤田尋美さん】喪失体験で悲嘆抱える一人ひとりに耳を傾け

子どもが力強く人生を歩む手伝いを

――子どもが心の内を表に出せる環境を整えることが大切なのですね

そうですね。子どもが心に押し込んでいる気持ちを発散できる環境を整え、それを大人に受けとめてもらう体験を重ねることで、「自分はこのままでいい」「自分は大切な存在なのだ」ということを学んでいけます。

そうして、一緒におやつを食べたり、寝転がったりしているうちに、ふと、「お父さんが死んだ時、お母さん泣いていた」などと、自分のことを話してくれることがあります。私たちは、そうした一言一言にじっくり耳を傾け、寄り添い続けることが大事だと思っています。

プログラムの最後に、「今日楽しかったことは何?」と聞くと、さまざまな感想が返ってきます。中には「別に、面白いことはない」と言う子もいます。私たちとしては、少し残念な気もしますが、それでも良いと思っています。子どもたちが自由奔放に感想を語れるのは、安心している証拠ですから。

――最後に、悲嘆を抱える人に寄り添う時、心がけていることを教えてください

「こういう人にはこう向き合う」というマニュアルはありません。自分が不快に思うようなことを相手にしない、誠実に受け答えをする――これらを私は一番大切にしています。当たり前のようですが、実はとても難しいことなんです。

目の前でつらい体験を打ち明けられた時、相手の思いに共感しようとして、いかにも悲しそうな声色で相づちを打ったことはありませんか? その時、「あなたに私のつらさが分かるはずない」と反感を買うこともあります。<精いっぱい聴かせてもらいたい>。そうした心構えで、耳を傾けています。これは相手が大人でも子どもでも変わりません。

グリーフが生じるような出来事を誰も望んではいませんが、そうしたことがない人生というのはあり得ません。ただ、幸いなことに、人は皆、悲しい出来事を受け入れた時、それ以前よりも強く、頼もしく人生を歩むことができる力「レジリエンス」を備えているといわれています。心に傷や痛みを負った子どもが、力強く人生を歩むことを願い、その手伝いをこれからも続けていきたいと思っています。

プロフィル

ふじた・つぐみ 1950年、東京都生まれ。カウンセラー、グリーフ・ファシリテーター。保育園、障害児通園施設、児童館での勤務を経て、子ども家庭支援センターで相談業務に当たる。2006年に米国の「ダギーセンター」でグリーフサポートを学び、13年に東京・板橋区にグリーフサポートステーション「サンザシの家」(http://sanzashi.org/)を開設した。