立正佼成会 庭野日鑛会長 7月の法話から

全ての人の幸せを願って

お盆は、詳しくは「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と言います。お釈迦さまの十大弟子の一人である目連尊者(もくれんそんじゃ)のお母さんが、貪(むさぼ)りの心が強かった報いで、亡くなってから餓鬼道(がきどう)に落ちて苦しんでいたところ、お母さんを供養して救ってあげたいということから始まった仏教の行事です。インドから中国、そしてわが国へと伝わってきました。

同じ親切を尽くすならば、できるだけ行き届かせるようにといわれます。お盆に盂蘭盆供養をさせて頂く際には、ご先祖さまや縁のある仏さまのほかに、無縁の仏――本当は仏さまの教えからすると無縁ということはないのでしょうけれども――をも供養して、この世界に一人も苦しい人、悲しい人がないようにと願うのです。そうした深い思いやり、慈悲の心がお盆の大切な精神であり、そのことを私たちはしっかりと心に植えつけていきたいものです。
(7月15日)

画・茨木 祥之

心を落ち着ける機会に

盂蘭盆は、古いインドの言葉(サンスクリット語)の「ウランバナ」に由来し、これは、衆生が逆さまに吊(つ)り下げられた状態を言います。私たちが物事を逆に考えてしまい、それで苦しんでいるという意味合いです。

ですから、釈尊は、正しくものを見ることの大切さを常に私たちに説いてくださっています。正しく物事を見ると同時に、正しく生きていくことに努めなさい、という「正見」が教えの中心として説かれているわけです。

現在は、ものすごいスピードで世の中が変わっていますから、私たちは普段の忙しい生活の中で、知らずしらずのうちに自分も世の中に織り込まれてしまっています。自分の考えや行動、生活の仕方が正しいのか、誤っているのかさえ見当がつかずに、ただ無我夢中で暮らしているというのが普段の生活ではないでしょうか。静かな心でお墓参りをするとか、家でご先祖さまの供養をするとか、お盆は、そうした静かな雰囲気の中で、自分の今考えていること、生き方を調整する機会でもあります。

お正月とお盆は一年間の大切な区切りであり、昔から喜ばれていました。私は田舎に十年間いましたけれども、主に青年団の人たちが盆踊りを行っていて、そうした田舎のお盆を楽しんでいました。

盂蘭盆会にあたって、私たちは心を調節して、「正しい生き方をする」、また、「苦しんでおられる方々に慈悲の心で仏さまの教えをお伝えする」という大切なことを心に刻んで、これからの精進をさせて頂きましょう。
(7月15日)