画・花本彰

LIVE AT THE APOLLO

今回は、ディスコではまったジェームス・ブラウンを紹介します。

ラジオで初めて聴いたのは「IT’S A MAN’S MAN’S MAN’S WORLD」。スローバラードで、すごいソウルフルで耳に残りました。その後、本格的に夢中になったのが、ディスコでの踊りです。

ディスコでは、来場した人たちが並んで、曲ごとに違う振り付けのダンスをします。ジェームスのライブ音源を収録したアルバム「LIVE AT THE APOLLO」がディスコでかかると、踊っていてすごく楽しいんです。

「LIVE AT THE APOLLO」のレコード

一番、私が盛り上がるところは、レコード中盤の「I FEEL ALL RIGHT」。その一つ前の「THERE WAS A TIME」は同じメロディーが数分間繰り返されます。そして、彼が聴衆やバンドに「準備はいいかい？」と呼びかけ、気持ちをどんどん高めて「I FEEL ALL RIGHT」へ。この曲では、ホースという乗馬のような動きをするソウルダンスを踊ります。「Hey, Hey, I feel all right, three times, ah, ah, ah」という歌詞の、「ah, ah, ah」で腕振りのリズムを皆で合わせて、最後の「ah」で止めます。「ah」の回数は曲中で変わるので、何度か繰り返されるたび、皆との一体感が生まれていきます。

そうして、聴衆が慣れてきたところで、ジェームスが「COLD SWEAT」という次曲のタイトルを声高らかに宣言すると、曲が変わり、リズムが速くなっていくのもしびれます。

アポロシアターで録音されたレコードは何枚か発売されていて、私が紹介するのはそのうちの一枚です。ライブ音源なので、彼の観客への呼びかけ、客の応答、歓声も収録されていて、臨場感がよく伝わってきます。

私が大学生だった時、ライブ会場であるアポロシアターの目の前まで行きました。当時、シアターがあったニューヨークのハーレムは、日本のガイドブックに「行ってはいけない」と書かれていたほど、犯罪が多く、危ない地域でした。しかし、アポロシアターは歌手やダンサーの登竜門として知られる有名な劇場でしたので、一目見たくて友達と車を借りていきましたが怖くて降りられず、中に入れなかった思い出があります。

ジェームスの曲で踊ることが好き過ぎて、結婚式の２次会ではディスコを貸し切って、参列してくれた友人たちと、タキシードで汗だくになりながら踊ったこともあります。

日本で有名なジェームス曲は、「SEX MACHINE」です。カップ麺のＣＭで使われていました。「Get On Up」という歌詞の部分を「ミソッパ」と換えて本人が歌っているので、当時、見ていた人は聞き覚えがあるのではないでしょうか。

「SEX MACHINE」のレコード

横浜・本牧の米軍基地に友達のつてで入って、彼のライブを観（み）たこともあります。作り上げられたライブは、一つのショーのようです。彼はかつてボクシングをやっていたことがあり、その要素が所々で見受けられます。ジェームスの登場前にＭＣが彼を紹介しながら会場を盛り上げ、「ジェームス・ブラウン！　ジェームス・ブラウン！」と観客が何度も呼んでいるところで、彼がステージに登場。マント・ショーも見どころで、彼が歌っている途中にマイクスタンドのすぐ横でひざまずくと、周囲からローブをかけられ、支えられながら退場しようとして、ローブを振り払ってマイクに戻ってくるという一連の流れがあって、観客を楽しませてくれていました。

彼は黒人として差別され、苦しい時代を生き、何度か刑務所に入っていますが、「ファンクの帝王」と呼ばれるほどに、歌に、踊りに、作る音楽に情熱を注ぎ、ソウルフルなその歌声でファンを魅了してきました。

昔は、とんねるずの番組に、「SOUL TUNNELS」というコーナーがあって、ディスコダンスが好きな人たちが出演して、ダンスを競い合うようなものも放送されていました。今も、昔を懐かしむように、ディスコダンスが好きな人たちが集まって、踊っているそうですよ。そこでは、ジェームスの曲の踊りも見られるかもしれませんね。

プロフィル

とまつ・よしはる　１９５３年、東京都生まれ。慶應義塾大学、大正大学大学院を経て、ハーバード大学神学校で神学修士号取得。現在、浄土宗心光院住職、世界宗教者平和会議（ＷＣＲＰ／ＲｆＰ）日本委員会理事長、浄土宗総合研究所副所長、国際医療福祉大学特任教授を担っている。全日本仏教会理事長、日本宗教連盟理事長などを歴任。趣味は音楽鑑賞（ソウルミュージック）