ミンダナオに吹く風(2) 文・松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

「あなたは、どこのNGOに?」

初めてミンダナオに足を踏み入れたときは、貧しくても、孤児になっても明るさを失わず、生き生きとしている子どもたちの様子に感動した。ミンダナオの子どもたちは、手を振ると必ず笑顔で応えてくれるし、なかには駆けよってきて手をつなごうとする子も多い。

日本での生活で精神的に落ちこんでいたときだっただけに、言葉が通じなくても心が通じる子どもたちに出会って、自分自身が救われる体験をした。

けれど、戦争避難民になっている子たちは、ぼんやりしたまま中空を見つめているだけ。

「これは、ひどい。避難民生活が長く続き、なかには親が殺され、トラウマ状態になっている。こんな子たちを、このまま放っておくことはできない!」。そう強く思った。

あるテントの下に、病気の子がいたので、同行してくださっていた社会福祉士にたずねた。

「この子を、病院に運んであげたいのですが……」

するとその人から、逆に質問された。

「あなたは、どこのNGOに属していらっしゃるのですか? 」

どこにも属していないことを告げると、こう言われた。

「それでは、ここで救済活動をすることはできません」

ショックだった。そこで、キダパワンにもどると、マティの孤児施設からキダパワンに一緒に移って来た、3人の高校生にその話を打ち明けた。

すると、まだ16歳だった彼らが、躊躇(ちゅうちょ)しながらも力強く言った。

「NGOの法人資格をとる方法なんて、私たちには、わからない。でも、やってみる!」

そうして、ミンダナオの中心地ダバオの役所に何度も通い、普通なら最低でも一年間はかかると言われていた法人資格を、なんと半年で獲得したのだ。

「これで、大手を振って、子どもたちへの医療救済ができる。スカラシップ(奨学金制度)と読み語りもできる!」

これが、ミンダナオ子ども図書館を始めるきっかけだった。

ミンダナオ子ども図書館は、フィリピンの特定非営利活動法人で、正式の名は、Mindanao Children’s Library Foundation, Inc.という。

自分たちの食事の材料を自ら収穫するミンダナオ子ども図書館の子供たち

現在では、ムスリム、クリスチャン、先住民族の子たちを奨学生として大学卒業まで支援している。ミンダナオ子ども図書館の奨学生の選考の際は、単なる優等生ではなく、極貧でかつ親が戦争で殺されたり、家庭が崩壊して孤児になったりして苦しんでいる子たちを優先している。現在、総数が600人弱で、保護が必要な子たち80人ほどが、本部や下宿小屋に住んでいる。スタッフも25人ほどいるけれども、ほとんどが卒業生たちだ。

つい先日、ミンダナオ子ども図書館は、北コタバト州の認定から、フィリピン政府直轄の認定NGOになった。これも、彼らの努力の結果だ。

プロフィル

まつい・とも 1953年、東京都生まれ。児童文学者。2003年、フィリピン・ミンダナオ島で、NGO「ミンダナオ子ども図書館」(MCL)を設立。読み語りの活動を中心に、小学校や保育所建設、医療支援、奨学金の付与などを行っている。第3回自由都市・堺 平和貢献賞「奨励賞」を受賞。ミンダナオに関する著書に『手をつなごうよ』(彩流社)、『サンパギータのくびかざり』(今人舎)などがある。