ミンダナオに吹く風(23) 先住民の村へ 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

私は、広大な風景が広がる尾根の上で車を止めた。訪問者たちは息をのんだ。

「まるで、北海道の原野から大雪山系を見ているようだ。それにしても、ジャングルが広がっているのかと思ったら、地平線まで樹木らしい木がほとんどないなあ」

「正面に見えるのがアポ山です。ジャングルは、その周辺に6%しか残っていない。ラワンやマホガニーといった木々は熱帯材として伐採されて、ほとんど日本に持っていかれたんですよ。平野に住んでいた先住民たちは、開発で山に追われて良い土地はほとんど輸出用のバナナやパイナップルのプランテーションになってしまいました。ほら、あの斜面に見える集落が、これから向かうマノボ族のキアタウ村です」

先住民たちのたどってきた歴史は、過去のものではなく、現在の厳しく貧しい生活につながっているのだ。

上記のことがあった翌2010年、このキアタウ村に立正佼成会の庭野光祥さま母娘と会員の親子の皆さんが来られて、ミンダナオ子ども図書館の子たちと一緒に「平和の祈り」を行い、貧しい先住民の子たちに直接「ゆめポッケ」を渡した。

(※1)ミンダナオの先住民の焼畑を中心とした文化人類学的な記述と現状に関しては増田和彦著『焼畑の民』『焼畑と森の民』(岩田書院)参照。ミンダナオ子ども図書館も載っています。

プロフィル

まつい・とも 1953年、東京都生まれ。児童文学者。2003年、フィリピン・ミンダナオ島で、NGO「ミンダナオ子ども図書館」(MCL)を設立。読み語りの活動を中心に、小学校や保育所建設、医療支援、奨学金の付与などを行っている。第3回自由都市・堺 平和貢献賞「奨励賞」を受賞。ミンダナオに関する著書に『手をつなごうよ』(彩流社)、『サンパギータのくびかざり』(今人舎)などがある。近著は『サダムとせかいいち大きなワニ』(今人舎)。