ミンダナオに吹く風(18) ミンダナオ子ども図書館の訪問者 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)
ミンダナオ子ども図書館では、訪問者がある場合は、車を出し、ダバオの空港まで迎えに行く。その時、空港から出てこられたのは、当時の社会貢献グループの次長であった、保科和市氏と2人の同行者だった。訪問者を乗せた四輪駆動車は、まず最初に、戦前に日本人町があったダバオ近郊のカリナン町へ移動した。日本人とミンダナオの深い関係を知っていただくためだ。途中ミンタルに残っている日系人墓地を訪れた。
ここは、第二次世界大戦が起こる前からミンダナオに住んでいた日系人の墓だ。戦前からミンダナオには、東洋でも最も多くの日本人が住んでいたといわれており、マニラ麻の農場を開いていたり、麻でロープを作る工場で働いていたりした。また、ミンダナオ周辺の海域は、南洋マグロをはじめとする豊かな漁場であることもあり、九州や沖縄の漁民たちが漁船でミンダナオを訪れ、漁業基地にもしていた。
現地の先住民と結婚して家族を持っている人もたくさんいて、世界大戦で日本軍が侵攻してくる前までは、日系人たちは「郷に入りては郷に従え」のことわざ通りに、現地人と協力し合いながら溶け込んで生活していたという。そういう人たちの埋葬されている日本人墓地が、ミンタルに残っているので、私たちは、訪問者の方々をまずはそこにご案内する。
ミンダナオ子ども図書館では、ミンタルの日系人墓地でも、奨学生たちと共に「平和の祈り」の祭典を行っている。その場所に案内した後、日系人資料室にも寄り、さらに、マノボ族の山岳地帯、イスラームの湿原、バゴボ族の山、ダバオの貧困地域を回った。これから、この時のエピソードを順次書いていきたい。
プロフィル
まつい・とも 1953年、東京都生まれ。児童文学者。2003年、フィリピン・ミンダナオ島で、NGO「ミンダナオ子ども図書館」(MCL)を設立。読み語りの活動を中心に、小学校や保育所建設、医療支援、奨学金の付与などを行っている。第3回自由都市・堺 平和貢献賞「奨励賞」を受賞。ミンダナオに関する著書に『手をつなごうよ』(彩流社)、『サンパギータのくびかざり』(今人舎)などがある。近著は『サダムとせかいいち大きなワニ』(今人舎)。