利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(65) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

因果の帰結

今後に待ち受けるものは、まず、これまでの政治路線の帰結である。選挙中もコロナ感染状況は再び悪化を続けており、極めて深刻な事態になりつつある。同時に物価上昇が加速しており、多くの人々の生活をさらに苦しくすることは疑いない。これらは、アベノミクスをはじめとして、安倍政権以降の各政権が基本的には推進してきた政策の結果である。選挙によってこの路線に人々が信任を与えたのだから、この帰結を国民は受けざるを得ない。

同時に、安倍元首相は、敵味方を分けて、前者を標的にする攻撃的な政治スタイルを取って、アメリカのトランプ政権のように、政治的対立を激化させた。国会を、言論による理性的な公共的討論の場というよりも、数の力により決着をつける場にしてしまい、民主主義を危機へと陥らせた。銃撃という衝撃的な事件は、暴力による犯罪そのものであり、与党自らが「民主主義への挑戦」として、暴力への反対を直後の参院選で訴えた。安倍政治は政治的世界において攻撃的傾向を加速させたが、ブーメランのように、通常の政治的対立とは別のところから安倍元首相本人へと暴力が向けられてしまい、その生命が奪われてしまったのである。私たちは、改めて平和的な対話によるアプローチの重要性を再確認すべきだろう。

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