利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(58) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
画・国井 節
子供をどのように育てますか?
年の瀬が迫ってきた。思えば今年の新年には今後の明暗双方について書いた(第47回)が、その後はほとんど「コロナ禍」という暗面に焦点を合わせざるをえなかった。現在、オミクロン株が世界中の懸念事項になっており、自国への流入・拡大防止策が焦眉の急だが、日本のコロナ感染状況自体は小康状態にある。
そこで今回は、1月に書いた拙著『ポジティブ心理学』(講談社)の観点から育児法について述べてみよう。皆さまは育児についてどのように考えておられるだろうか。私が出会った人々の中でも多様な考え方がある。
たとえば、「躾(しつけ)は厳しく」とか、「抱き癖がつくから子供は抱かない」と言う人がいた。また、「お受験」の世界で、有名な幼稚園や小学校に合格できるように、子供を塾に通わせて、幼い頃から躾をしっかりと教え込み、大量の教材で勉強を毎日させている親もいる。試験当日に良い評価を得ることが育児の最大目標になっているのだ。
しかし、その幼児たちは、お人形さんのように行儀はよくても、目や表情を見ると、暗く生気がない場合がある。私はそのような育て方はすべきでないと思う。生き生きと健全に育って、将来自発的に自らの道を決めて歩み、幸福になることが難しくなってしまいかねないからだ。厳し過ぎれば、子供たちの心が傷ついたり、心理的な問題を抱えてしまったりする場合がある。
逆のモデルを考えてみれば、女の子なら「アルプスの少女ハイジ」とか、宮崎駿監督の映画に出てくるヒロインたちのように、純朴で、元気にして快活、心が明るく思いやりがあって笑顔の多い子供たちが思い浮かぶ。このような子供は、自らが幸せになるとともに、人に優しく社会に貢献できる可能性が高いだろう。こういった子供を育てるためには、どうすればいいのだろうか。