おもかげを探して どんど晴れ(19) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)

その表現とは、身の回りにいる相手の存在を意識して表現することです。大切な人が自分の思う通りにいつまでも生きてくれるとは限りません。死は、「明日も生きている保証はないよ」ということをいつも教えてくれます。

明日が当たり前に来るわけではありませんから、今日生きていることに感謝して、今日のうちに大切な人に感謝の気持ちを伝えてください。明日がもし来なかったとしても、お互いに思い残すことはないでしょう。亡くなった方が不満いっぱいの悔しい気持ちではなく、満たされた心でお空に行くと、その人のあなたに対する愛情が、悲しみを抱えるあなたを丸ごと、包み込んでくれるのではないでしょうか。感謝を伝えられずに大切な人をお空に見送った方は今、亡くなった大切な人へ心を込めて感謝の思いを伝えてください。思いは、どこにいようと伝わります。遅いも早いも、ないと思います。いのちの授業では、子どもたちに、こうした内容を中心に話しました。

そして、「人は誰でも、あなたにしかできない何かの使命を持って存在している」ということを、授業の中では伝えています。

〈中学2年生・女子〉
笹原さんが描いた『おもかげ復元師の震災絵日記』(ポプラ社)の中に、「こんなことになるなら、あの朝母さんとケンカするんじゃなかった。いつもありがとうって言えばよかった」というページがあります。私は普段、母とはほとんど話をしませんが、いのちの授業の後、よく考えてみれば料理を作ってくれたり、知らない間に私の世話をたくさんしてもらっていることに気が付いてしまいました。これからは感謝しながら生きていこうかなと思いました。そしていつか、私も言葉に出して、母に「ありがとう」と素直に言えるようになりたいです。

〈中学3年生・男子〉
ぼくは普段、家族と会話をしません。今日のいのちの授業を聞いて、明日が当たり前に来る訳ではないことを理解して、二度と戻らない「今」という時間を精一杯生きて欲しいという言葉を聞いて、自分の家族を思いました。家に帰って、とても久しぶりに母に話し掛けて、楽しい会話をしたような気がします。これからは、家族と過ごす時間をもっと大切にして、「今」という貴重な時間を積み重ねて生きていきたいと思いました。

〈高校1年生・男子〉
僕は笹原先生の話を聞いて、人の生と死について深く考えました。自分は小さい頃から、人は何故生きるのか、何故生きなければならないのかと考えていました。生命体として、活動する目的が全く分かりませんでした。生きること、人生って面倒だしやってられないと思うことがとても多く、何故生きなければならないのかという気持ちさえありました。ですが、今日の授業で衝撃的な言葉と出会いました。「人はさまざまないのちに感謝するために生きている」という言葉でした。誰かに感謝していれば、いつか自分も感謝されるかもしれません。人はきっと、自分の存在価値や自分の心の置き場所を探して、安心しようとして生きているのかもしれません。だとしたら、僕は一番に祖父の所へ行って話をしたいと思いました。僕の安心できる場所は、大好きな祖父のいる部屋であることに気が付きました。つべこべ考えず、僕がおじいちゃんに出来ることが何なのか、会いに行って考えたいと思いました。僕は、おじいちゃんがただ存在してくれているだけで幸せです。

※タイトルにある「どんど晴れ」とは、どんなに空に暗雲が立ち込めても、そこには必ず一筋の光がさし、その光が少しずつ広がって、やがて真っ青な晴天になるんだよ、という意味です

プロフィル

ささはら・るいこ 1972年、北海道生まれ。株式会社「桜」代表取締役。これまでに復元納棺師として多くの人々を見送ってきた。全国で「いのちの授業」や技術講習会の講師としても活躍中。「シチズン・オブ・ザ・イヤー」、社会貢献支援財団社会貢献賞などを受賞。著書に『おもかげ復元師』『おもかげ復元師の震災絵日記』(共にポプラ社)など。