おもかげを探して どんど晴れ(14) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)
あれから8年
今年の3月11日で、東日本大震災の発生から8年を迎えました。3月に入り、暖かい日が続いていましたが、この日だけは暴風雪でした。「あの日と同じ天気だな」と、感じていました。
今年は1月末あたりから毎日、沿岸地域に住んでいる子どもや大人の方から電話がかかり、訪問が相次ぎました。被災した子どもたちは、当時小学生だった子が高校生になり、大きく成長していました。入れ替わるように子どもたちは遊びに来て、または泊まりに来ては当時を振り返り、「あの時の年齢に戻ったみたいだね」と、みんなでしみじみ語る時間を過ごしました。
思い出には、つらかったこともたくさんあります。私は子どもたちに、こんな話をしました。
「寂しくて悲しくて、後悔をたくさんした――そんな過去は、こうやってみんなで振り返るのも、良いと思うよ。過去に体験した思い出から、いろんなことが探せるから。一つずつゆっくり考えて、良い時間を過ごした日が“命日”だからね。この命日には、大切な人がちゃんと自分の中に存在してくれているから、大切な人と一緒に考えることができるでしょ?」
いろいろな話をしていると、子どもたちの質問が次々出てきて、いつまでもやみません。実は、朝まで話すこともたくさんあります。
あれから、8年。良いと思えることもそうでないことも、いろんなことがありました。
毎日があれからの悔しさと葛藤しながらの積み重ねだけれど、一日一日、学んで、生きていることは確かなこと。後悔は人に備わった大切な感情で、そのことを通して、たくさんの大切なことに気づかせてくれます。
たくさん悩んで、選択して、そしてまた悩んで、これで良かったのかなと話し合う。私は、そうやって被災者の皆さんやご遺族と毎日を過ごしています。
悲しい体験をした人が、新たに生活のペースを作り上げるまでには、やらなければならないことがたくさんあります。比較的長い時間がかかります。深い悲しみと向き合うのは、さらにもっとずーっと後になることを、ご遺族と共に過ごす毎日の中で感じています。
※タイトルにある「どんど晴れ」とは、どんなに空に暗雲が立ち込めても、そこには必ず一筋の光がさし、その光が少しずつ広がって、やがて真っ青な晴天になるんだよ、という意味です
プロフィル
ささはら・るいこ 1972年、北海道生まれ。株式会社「桜」代表取締役。これまでに復元納棺師として多くの人々を見送ってきた。全国で「いのちの授業」や技術講習会の講師としても活躍中。「シチズン・オブ・ザ・イヤー」、社会貢献支援財団社会貢献賞などを受賞。著書に『おもかげ復元師』『おもかげ復元師の震災絵日記』(共にポプラ社)など。
インタビュー・【復元納棺師・笹原留似子さん】死者と遺族をつなぐ 大切な人との最後の時間をより尊いものに