おもかげを探して どんど晴れ(11) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)
その日のお昼頃、一本の電話が鳴りました。関係者でしたので、今朝の話をしました。「ケーキ、好きだったのかな? どうして、ケーキなんでしょうね?」。私が聞くと、「そうでしたか……。(しばらく沈黙)実は今日……、あの子の誕生日なんです」との言葉が返ってきました。「そうかぁ、それでケーキだったんですね。お誕生日だよって、教えに来たんですね」と私は答えました。それをきっかけに、夜に他人ではあるけれど関係者が集まり、血はつながらないけれど、みんなでその子の誕生日会をすることになりました。
仕事も立て込んでいて、閉店間際のケーキ屋さんに駆け込んだ弊社の職員が、「白いケーキ、残り1個でした」と言って社に帰ってきました。ケーキにロウソクを立て、部屋の電気を消して、その子を祝福する歌をみんなで歌いました。私は、暗い部屋の中で携帯でケーキの写真を撮りました。すると、なんと、連写した写真の3枚に、小さな小さな火の玉が、用意したりんごジュース目掛けて飛んでいる姿が写りました。
小さな火の玉は、二つありました。「お友達を連れて来たんだね」。私がそう言うと、ジュースを用意してくれた職員が「せっかくコップにストローをさしたのですが、ストローからではなくコップのふちから飲んでますね(笑)。お友達と来たのですね。では! お友達の分も、用意しないといけませんね」とニンマリ。昨年も、全国各地で虐待が原因で多くの子どもたちが亡くなりました。お友達は、その一人だったのかもしれません。
私たちは、「このご縁を無駄にしたくない。ただ過ぎたこととして見過ごすのはやめよう」と話し合いました。今年から、火の玉として姿を見せてくれた弊社の一室を利用して、虐待、貧困、悲嘆に直面している子どもたちの援助活動を、「今、できることを」との思いで、ささやかですが、始めることにしました。また皆さんに、この活動を本連載の中で時々お伝えしていきたいと思います。
2019年は、「平成」から新しい元号になり、その元年になります。亡くなった方々が遺(のこ)してくれた大切なことを胸に秘め、新しい年が皆さまにとっても輝ける年となりますようにご祈念申し上げます。いのちを思う時は、そのいのちが輝く時。皆さまと今年も一人ひとりのいのちを輝かせていけますように。どうぞ、よろしくお願い致します。
※タイトルにある「どんど晴れ」とは、どんなに空に暗雲が立ち込めても、そこには必ず一筋の光がさし、その光が少しずつ広がって、やがて真っ青な晴天になるんだよ、という意味です
プロフィル
ささはら・るいこ 1972年、北海道生まれ。株式会社「桜」代表取締役。これまでに復元納棺師として多くの人々を見送ってきた。全国で「いのちの授業」や技術講習会の講師としても活躍中。「シチズン・オブ・ザ・イヤー」、社会貢献支援財団社会貢献賞などを受賞。著書に『おもかげ復元師』『おもかげ復元師の震災絵日記』(共にポプラ社)など。
インタビュー・【復元納棺師・笹原留似子さん】死者と遺族をつなぐ 大切な人との最後の時間をより尊いものに