おもかげを探して どんど晴れ(10) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)

画・笹原 留似子

天賦の才(質)に恵まれるとは

優れた人に出会うと、思わず「天賦(てんぷ)の才に恵まれている」という言葉が漏れることがあります。

才は「生まれつき備わっている能力」、天賦は「天から与えられた、人の力ではどうにもならないもの」と辞書には記されています。

才とは、質を指すともいわれていますが、それは「死」や「生」に関わる「いのち」にも通じることではないでしょうか。

「いのち」は元々、天から与えられたもの。いのちのスタートとゴールは、人の力ではどうにもならないものです。ですから、誰もが天賦の才を持っているのだと思います。

質とは、いのちの使い方を示しています。生活の質を基本として人は生きていますが、その質を高め、深めるのも、その人次第です。

「なぜ?」「どうして?」と、自分に問うことで物事の本質や問題の原因が見えてきます。このことを大切にする人は、人との出会いや身辺に起こる物事を深く考える中で、自らの深く清い心と出会います。その中で人として生きていくルールを知り、自身を磨く努力を実践できるので、自らの質を高めていると言えます。

逆に、自分が高められないことを人のせいにしたり、能力がないと言ったりして意味のある努力を選ばない人は、本当は目の前に素晴らしい世界が待っているのに見えておらず、残念ながら自分の限界を自分で決めている人と言えます。そうした人は、自分を責めるように、自虐的に自分に問う癖があり、同時に人のせいにすることで苦しみが楽になるような方法を選びがちです。そして、口から出るのは悪口や妬(ねた)み、恨み。努力する前から、自分の限界を人に伝えているとも、マイナスの思考の話を多くの人が聞きたくないと思っていることにも気がつかないまま、いつしか自分の周りから人がいなくなってしまっている。そういう人生を歩んでいる人が、案外大勢います。

昔からお天道さまは、人が見ていなくても黙々と努力をする人を好むといわれています。お天道さまに好かれると、運をつかむことができ、いのちの使い方が広く深く表現できるステージに立てるわけです。努力をしている人は、ワクワクし、楽しんで過ごしており、そのため、努力しているのに、その自覚はなく、人の喜ぶことに向かって探求していることが多いようです。ミラクルは、そういう人に起こるものです。

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