利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(21) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

公議・公論・公道の政治を甦らせるべし

「五箇条の御誓文」の二つの条で言われていたような、公共的な議論による議会政治や、倫理的で公共的な政治という考え方は、今日でも、重要な政治思想の核心である。「共和一致」と横井小楠が言ったように、それは共和主義と言われる。この意味では、志士たちが掲げた政治的理念の主柱は、今なお必要なものであり、決して色あせてはいない。歴史的に有意義だったと評価するにとどまらず、21世紀において再び甦(よみがえ)らせるべきものなのだ。

よって、明治維新の志士たちを振り返ってその意義を見つめ直そうという現政府の試みは、逆説的ながら決して的外れではない。今の時代において、議会を形骸化させつつある専制的な政治を打破して、公共的な議論の場を活性化し、公共的な論理を再生させて、公共的な道や精神に基づいた政治を甦らせる――このことこそ、維新の志士たちの熱き魂が、今日の世界に指し示すところなのだ。

プロフィル

こばやし・まさや 1963年、東京生まれ。東京大学法学部卒。千葉大学大学院人文社会学研究科教授で、専門は政治哲学、公共哲学、比較政治。米・ハーバード大学のマイケル・サンデル教授と親交があり、NHK「ハーバード白熱教室」の解説を務めた。日本での「対話型講義」の第一人者として知られる。著書に『神社と政治』(角川新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう』(文春新書)など。

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