法華経のこころ(16)
「目を閉ずれば則(すなわ)ち見、目を開けば則ち失う」(観普賢菩薩行法経)
目を閉じて静かに精神を集中すれば仏さまの説かれた真理を自覚することができるが、目を開いて現実の世界を見渡すと、もうそれらはどこか遠くへ霞(かす)んでしまう。
毎年9月に行われる動物愛護週間。今年も9月20日から26日まで実施され、その折、同僚記者と二人で、動物愛護について話し合った。
同僚記者いわく。「仏教では五戒の第一に不殺生戒をあげている。“生きものを害してはならぬ、殺してはならぬ”というのが理想だ。それが現実にはボク自身、動植物を食べ、“有害”という名目で生きものを殺している。このことに目をつぶって動物愛護なんて言えないなあ」。
私も同調した。「かわいい、かわいらしくない、益虫、害虫……。動物にとって、そんな選別をされるのはいい迷惑なんだろうな。おいしい肉を食べるため、例えば牛を品種改良して運動もさせないで太らせる。こんなことまでしていいのだろうか。生きものに対するサンゲの心――それが動物愛護の出発点じゃないか」。
その日の夕食。献立はポークソテーだった。想像以上に硬い肉質で、なかなかのみ込めない。つい先ほど動物愛護について語り合ったことなどすっかり忘れ、思わず私はこう言っていた。
「なんだこの肉。うまくないよ!」
(N)
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