バチカンでの9月11日/ヨハネ・パウロ2世とプレヴォスト神父(海外通信・バチカン支局)

ハイジャックされた4機の旅客機によるテロ攻撃によって3000人近くの犠牲者を出した、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件。そのテロ事件から、今年で25年の歳月が流れた。
あの日、教皇ヨハネ・パウロ2世は、ローマ郊外のカステルガンドルフォにある教皇避暑宮殿で静養中であった。ヨハネ・パウロ2世がテロ発生の報を受けたのは、当時のバチカン報道官、ホアキン・ナヴァロ・ヴァルス氏からだった。ヨハネ・パウロ2世の反応を回想する「バチカンニュース」(9月11日付)は、報を受けた教皇が早速、避暑宮殿の礼拝堂に赴いて祈りを捧げ、米国のジョージ・W・ブッシュ大統領への6行の電文を認(したた)め始めた、と報じている。ヨハネ・パウロ2世は、米国大統領に宛てた電文の中で、自爆テロを「筆舌に尽くし難い恐ろしさ」「非人間的」と呼び、当時の世界状況を「暗く、悲劇的」と定義した。
翌12日、ヨハネ・パウロ2世は、バチカン広場での一般謁見(えっけん)に臨み、「昨日は、人類史の中で暗黒の日、人間の尊厳性に対する攻撃の日であった」と、同時多発テロ事件に関する教皇からの発言を待っていた信徒たちに呼びかけた。「どうして、このような野蛮で残忍な出来事が起こったのか」と問うヨハネ・パウロ2世は、「悪と死が最終的な言葉とならないように」と願い、「キリストの光明」への道を示した。
同時期にローマでは、聖アウグスチノ修道会の第180回総会が開かれており、9月14日には米国人のロバート・フランシス・プレヴォスト神父(現教皇レオ14世)が総長に選ばれていた。プレヴォスト新総長は同21日、就任ミサを司式し、ミサの説教の中で「11日に米国を震駭(しんがい)させた悲劇的な出来事を追憶しないではいられない」と発言し、その原因が「世界各地で悪化しつつある一連の問題の噴出にある」と分析した。「憎悪と暴力は、多くの人々が種々の形態で表現される不正義によって、極限的な貧困に追いやられている限り、存在し続ける」と予告。未来の教皇は、「多くの人々が復讐(ふくしゅう)心に燃えている世界状況の中で、聖アウグスチノ修道会の会士は、福音と、福音の提唱する一致、対話、平和、和解といった価値観に対する証しを実行していかなければならない」と呼びかけていた。「平和の神学」を説き続ける現教皇の路線が、25年前の9月11日、既に明らかにされていた。
教皇レオ14世は先日の9月13日、バチカン広場での日曜恒例の正午の祈りの席上、英語とイタリア語で「2日前は、米国における9月11日のテロ攻撃の25周年だった」と追憶し、「テロ攻撃によって亡くなった人々、今でも、あの悲劇的な日の後遺症に苦しんでいる人々への祈りを新たに」しながら、「紛争と暴力が、こんなに多くの兄弟姉妹を苦しめている現代世界にあって、主なるキリストが世界に平和を与えてくださることを祈るよう、全ての人々を誘(いざな)う」とアピールした。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)





