地域の非営利団体に協力する「一食地域貢献プロジェクト」(9) 安城の三河万歳保存会(安城教会が支援)

さまざまな祝いの席に参上する「安城の三河万歳保存会」。公演の締めくくりは、「皆さま方のご多幸をご祈念いたします」の決めぜりふだ

舞い継がれていく伝統の技と心

「♪銭やお金が、ざくざくざくにぃはぁ。おお、ざくざく」「へへ、ざくざく」。太夫の陽気な歌声に才蔵が掛け合い、鼓を打つ。太夫と才蔵の満面の笑みにつられ、観衆からも笑みがこぼれる。6月下旬、540年の歴史を持つ「三河万歳(まんざい)」の演目の一つ、『三羽鶴の舞』が愛知県内の公民館で披露された。

繁栄を願い、めでたい文句を唱えながら舞う、日本の伝統芸能の一つである万歳。愛知県安城市に伝わる「三河万歳」は、戦国時代に戦勝祈願として始まり、新年を祝う祝福芸に変化し、江戸時代には幕府の庇護(ひご)を受けて発展した。その後も伝統が引き継がれ、平成7年には国の重要無形民俗文化財に指定された。

これを継承するのが、昭和42年に設立された「安城の三河万歳保存会」。「三河万歳」のほか、尾張から伝わった「御殿万歳」「三曲万歳」も継承している。地域の祭りやイベントなどさまざまな祝いの席で演じられ、同市の姉妹都市のある米国やオーストラリアで披露するなど、近年は海外まで活動の幅を広げている。

保存会は、芸歴50年以上の会員を含め、21歳から75歳までの約30人が在籍する。その多くが地元出身者で、幼少期から三河万歳に親しんできたという。稽古は月2回。若手への指導は会員宅でも行われる。

「正統なものを伝えていく努力をしないと、少しずつ形が崩れていってしまう。そのために同じ形を何度も練習します。何より伝える自分たちが正しい万歳をやらないとね」と、三代目若杉喜利太夫を襲名する副会長の杉浦重夫さん(70)。「完璧な演技はない」というのが会員たち共通の考えで、技を磨く努力に余念はない。

近隣の小中高校には、郷土芸能のクラブがあり、保存会のメンバーが定期的に生徒に三河万歳の指導を行っている。新1年生が入部する4月、最初の練習の際に杉浦さんが教えるのは、万歳を「思いきり楽しむ」大切さ。演じる側の気持ちは必ず観客に伝わるからで、さらに、初舞台を踏むと技が一気に上達するという。

「観衆が手をたたいて喜んでくれるのが、子供たちにとって大きな感動なのです。三河万歳を受け継いでもらいたいという気持ちもありますが、万歳を通して人前で堂々と行動する度胸をつけてほしいという願いも大きい」(杉浦さん)

芸の喜びは人から人へ、絶え間なく舞い継がれていく。

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この企画では、立正佼成会「一食(いちじき)地域貢献プロジェクト」が支援する団体の活動を紹介する。

メモ:一食地域貢献プロジェクト

「一食を捧げる運動」の浄財の一部を全国各教会が主体的に活用し、地元のニーズに応えて活動する非営利団体の支援を通して、温かな地域づくりに協力している。なお、「一食を捧げる運動」とは、月に数回食事を抜く、あるいはコーヒーなどの嗜好(しこう)品を控えて、その食費分を献金して国内外の諸課題に役立てる取り組み。
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