鼎談・世界の子どもたちの未来を考える 前編

木原 私は母親になって5年になります。やはり、グアテマラのお話を聞く中で、私自身の子育てと一致するところが大きいですね。

習学部・青年ネットワークグループの木原スタッフ

決して、遠い国の人たちの話ではありません。私も完全母乳で子どもを育ててきたのですが、日本では栄養や子どもの発達の大切な点など、自分から気づいていかないと、今は誰も教えてくれません。グアテマラのプロジェクトを通して、自分の子どもに対してどう触れ合っていくと良いのか、ということを改めて学ぶことができる事業だと感じています。

庭野 そうした意味でも、「一食ユニセフ募金」は、まるで世界の子どもたちをつなぐ魔法の道具のようですね。

私の長女は、小学生の頃に、初めてユニセフ募金のため街頭に立ちましたが、そのことを卒業文集に書いていました。それを読むと、長女は〈自分はまだ子どもだから、クラスのお友達の助けにはなれても、遠くの人の役には立てない〉と思っていたそうです。けれど、ユニセフ募金に参加して、はじめは大きな声で募金をお願いするのが、恥ずかしかったけれど、だんだん声が出せるようになり、自分も外国で大変な思いをしている子どもの役に立てると感じられ、とてもうれしくなったそうです。

篭嶋 ユニセフ協会は世界各国にあるのですが、日本のように、子どもたちが街頭に立ち、市民の皆さんから募金してもらったお金を私たちユニセフに届けてくれていることをグアテマラで働いているユニセフのスタッフに話すと、皆、びっくりします。一度に、大企業から何百万ドルものお金を寄付されることもありますが、それとは違うからでしょう。

5月の「青年の日」を中心に各地で行われる一食ユニセフ街頭募金

立正佼成会の皆さまは、街頭募金に立つだけでなく、「一食を捧げる運動」を通して、お昼ご飯やお菓子を抜き、空腹感を味わい、世界の人々に思いを馳(は)せる。その精神も大事にしながら、ユニセフに募金をしてくださっていますね。

街頭募金で入れてもらうのは、数十円の時もある。人によっては、街頭募金は、効率が悪いと指摘する人もいます。しかし、そうした効率的なこと以上に、募金に立つ子どもたちも多くのことを学び、それを見ている大人たちも〈何で、子どもたちがこんなに一生懸命になってやるんだろう〉と心を動かすものがあるのだと思います。だから、募金に立とう、募金をしよう、という気持ちになる。日本人の優しさや慈悲深さも関係しているのではないかなと思います。

庭野 もちろん事前学習会などで世界の現状を学びます。けれど、子どもたちにとっては、暑くてのどが渇く中、声をからして、「一食ユニセフ募金お願いします!」と大きな声で募金を訴えるという経験こそが、宝物だと思います。自分も大変な思いをしながら、遠い国の顔も見たことのない誰かのために〈自分も役に立てるんだ〉と実感できる体験を子どもたちにさせてあげられる。それが、ユニセフ街頭募金の素晴らしいところです。援助を受ける子どもだけではなくて、支援する子どもも、遠くの人へ想像を膨らまし、思いやりを持ち、成長できる。「してあげるだけ」「してもらうだけ」ではなく、お互いさまだと思います。

篭嶋 お互いさま。いい言葉ですね。私もあなたもお互いに、いろいろな経験ができるって素晴らしいことですよね。

鼎談・世界の子どもたちの未来を考える 後編

篭嶋副代表プロフィル

かごしま・まりこ 奈良県出身。同志社大学を卒業。高校の英語科教員として勤務した後、英国のウォーリック大学大学院で教育学修士を取得。外務省のジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)としてユニセフへ就職。その後、メキシコ(JPO)、アフガニスタン、アンゴラなど7カ国8カ所の現地事務所で勤務。2013年からグアテマラ事務所副代表、18年8月にジャマイカ事務所代表に就任した。