鼎談・世界の子どもたちの未来を考える 前編

庭野 篭嶋さんのお話を伺って、子どもの頃に祖父が話してくれたことを思い出しました。立正佼成会の創立者であり、会長だった祖父(庭野日敬開祖)は、帰宅するといつも夕食の時に国内外のさまざまな出来事やお会いした人のことを話してくれました。

庭野次代会長

私は祖父の話から、世の中には苦しんだり、悲しんだりしている人がたくさんいること、けれど同時に、そういう人たちに寄り添い、苦しんでいる人のために働く素晴らしい人たちも大勢いるということ、そして、世界には大変なこともあるけれど、人間ってとてもいいものなんだ、ということを学んだように思います。もちろん祖父自身が、人さまの幸せのために生きる人でした。私はそんな祖父の話を聞くのが大好きで、私もいつか祖父のように、誰かの役に立てる人になりたいと思って成長しました。篭嶋さんをはじめ、ユニセフで働かれている方は、まさに祖父の話に出てきた〈素晴らしい人たち〉だと思いました。

篭嶋 人が見ていなくても自分ができる範囲の中で、さまざまな環境下に置かれている人を一所懸命に助けようとしている人がたくさんいるんですよね。グアテマラの小さな村にもそうした方が大勢います。

グアテマラは現在、5歳未満の子どもの2人に1人が慢性的な栄養不良で、この割合は世界で6番目に高く、ラテンアメリカ地域では最も高い数値になっています。その慢性的な栄養不良を改善するため、ユニセフでは、グアテマラの医療機関などと協働で、乳幼児や妊産婦の栄養改善事業「『はじめの1000日』キャンペーン」を通じた「母乳育児の推進と栄養改善」プロジェクトを行っています。2014年からは立正佼成会の皆さまにサポートを頂いている事業です。

ユニセフと世界保健機関(WHO)が定めた完全母乳育児の推進に関する10カ条に病院が取り組み、条件を満たすと「赤ちゃんにやさしい病院」に認定されます。今、グアテマラにある全38カ所の国立病院のうち、11の病院が認定を受け、今年は六つの病院がテストを受けるためにスタッフが一丸となって取り組んでいます。新生児の死亡率の低下と栄養不良の改善、子どもの知育や発達を促すことにもつながるとされています。

このように病院へ働き掛け、成果も出ているのですが、これだけでは不十分なのです。先住民の60%の女性は、お金がない、病院が遠いという理由で受診できず、助産師(お産婆さん)の立ち会いのもと自宅で出産するケースが多いからです。お産婆さんへの教育も不可欠ですので、これまで誰もやってこなかったお産婆さんへのトレーニングを始め、トレーニングを修了した約200人分の証明書を発行しようと準備を進めています。今後は、この倍の人数のお産婆さんのトレーニングをすることが目標です。こうした取り組みの全ては、立正佼成会の皆さまの支援のおかげさまで成り立っています。

庭野 グアテマラの子どもたちの成長のために、私たち立正佼成会の活動がお役に立てているというのは、とてもうれしいことです。

【次ページ:世界の現状を学び、街頭募金に立つということ】