地域の非営利団体に協力する「一食地域貢献プロジェクト」(15=最終回) NPO法人「共育ファシリテーション・プロローグ」(広島教会が支援)
不登校児童・生徒がゼロになるよう願い
不登校の小・中学生への個別学習指導のほか、集団生活が苦手な生徒が通う通信制高校の運営、引きこもる子供の自宅に出向いての学習サポートや親へのカウンセリングを実施するNPO法人「共育ファシリテーション・プロローグ」。朝10時、広島市内の雑居ビルの一室にあるフリースクールに、小・中学生数人が集まってきた。パーテーションで仕切られた席で、各自が勉強したい科目の教科書を広げ、スタッフの指導を受ける。
「0よりも3小さな数は何か」という数学の問題を解く男子中学生が、解答の「マイナス3」を導き出せるよう、スタッフはノートに図や数式を書いてじっくりと説明する。正解した生徒は、「僕のペースに合わせてくれるから楽しい」と表情を明るくする。
代表の保田隆さんは、「何歳でも人生のプロローグ(序章)から再スタートできる」との願いを込め、5年前に団体を設立。それ以来、引きこもりや不登校だった48人の子供たちが、高校を卒業できた。
高校の社会科教師だった保田さんは2002年、職場に通えなくなり、学校を退職した。やがて、不登校の状態にあった一人の少女と出会い、関わり続け、復学させることができた。それを機に自分も社会復帰した。「『私のように、学校に行くきっかけが欲しい子たちを救ってあげて』との彼女の言葉が、今も心の支えになっています」と保田さんは語る。
同日午後には、小・中・高校生たち30人が、スクールの近所にある通信制高校の教室に集まった。“素敵なおとなの生き様”に触れることで自分の生き方を見つめる「一日1ミリレッスン」を受講するためだ。この日の講師であり、宅配弁当事業を展開する株式会社サンネットワークの田川幸雄社長は、「20代の頃、海外旅行の際に直面した困難を、自分の力で解決できた経験が、経営者として課題を乗り越える自信になった」と語った。
受講した男子高校生は、「田川さんの話に感動しました。ここで勉強をしっかりとして、画家になる夢を実現したい」と目を輝かせる。
「学校によっては、フリースクール形式で授業を行う『ふれあい教室』もありますが、そこにも通えない子供は大勢います。彼らの心の居場所づくりが急務だと感じる」と語る保田さん。「この世から不登校児童・生徒をゼロにする」という夢の実現に向け、今日も子供たちと向き合う。