地域の非営利団体に協力する「一食地域貢献プロジェクト」(14) 学校法人アジア学院 アジア農村指導者養成専門学校(那須教会が支援)
世界50カ国の青年に有機農業を伝える
豊かな泉質の温泉郷で全国に知られる那須塩原市。栃木県北部に位置する観光地に農村指導者の養成と訓練を行うアジア学院はある。
小高い丘に広がる6ヘクタールのキャンパスには、農場のほか、鶏と豚の畜舎、鯉の養魚池、堆肥場、研修棟や寮が点在する。研修生は、世界13カ国から集った青年たち。国籍や民族・宗教、年齢の異なる23人が有機農業を学びながら、自給自足の共同生活を営む。
朝9時半、この日、朝の集いでスピーチに立ったのは、立正佼成会のバングラデシュ教会からやって来たウー・トゥアイ・ヌ・マルマさん(32)だ。「ここで学ぶ、農薬を使わない農法は、土壌や環境を傷つけることも人を危険にさらすこともない。地域資源が乏しくても持続的に農業を営めることは大きな希望を与えてくれます」。自身の生い立ちや有機農業を通して母国を豊かにしたいという夢を発表すると、研修生たちから、割れんばかりの拍手が湧き起こった。
アジア学院は、鶴川学院農村伝道神学校を母体に1973年、高見敏弘牧師によって創設された。高見牧師と庭野日敬開祖との縁は深く、学院発足に当たって立正佼成会から財的支援や人材の交流もなされた。
毎年、アジアやアフリカ、太平洋諸島の農村から約30人が集まり、9カ月間の農村指導者研修プログラムを履修する。人々に“仕える”意識を持って指導できるようになるための「サーバント・リーダーシップ」、食と生命は互いに切り離せない相関関係にあることを学ぶ「フードライフ」、分かち合いと意思疎通を重視した「地域づくり」。三つの方針に基づく教育が施される。卒業生は50カ国以上、1300人を超えた。教会で豚の飼育を指導する牧師、難民に農業を教える若者など、公平で平和な社会を築くため、それぞれ各地で汗を流している。
荒川朋子校長は、「研修生には、最も苦しい立場にある人に愛をもって寄り添ってほしい。その上で、技術や知識を伝えられる指導者になってほしいと思います。本学院は、有機農業を教育する場である以前に、人づくりの場でありたい」と話す。
東日本大震災で施設の大半が損害を受けたが、国内のキリスト教会をはじめ個人、団体の支援で早期に復興を果たした。震災後は、地域貢献を目的に「アジア学院ベクレルセンター」を開設。近隣住民や農家から持ち込まれた収穫物の放射能計測検査を担っている。
「共に生きるために」――。高見牧師の掲げた同学院創設の精神は、那須の地から、世界の共同体へ広がっている。