共生へ――現代に伝える神道のこころ

共生へ――現代に伝える神道のこころ(15) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部教授)

未来を共に――生活になくてはならない自然の恵みに感謝の念を持って

前回、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みについて樹木と日本の神との関係や、伊勢神宮の式年遷宮(しきねんせんぐう)と造替後の古材のリユースに関わる事例を取り上げた。世界的な課題となっているSDGsの推進と神道の共生の理念というものを考える上で、今回は神道の自然観について少し触れたい。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(14) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部教授)

貴重な資材をよりよく生かす 式年遷宮に見る持続可能な開発

先日、電車に乗った際に、車両内の全ての広告が、SDGs(持続可能な開発目標)についての啓発ポスターであるのに気づいた。すっかり社会の中で馴染(なじ)んできた用語となったSDGsに関する啓発が、平成二十八(二〇一六)年に開始されてからはや6年。街を歩けば、カラフルな輪が特徴的なSDGsのバッジを、スーツやジャケットの襟に身に着けるビジネスマンの姿を多く見かける。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(13) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

民間信仰で奉斎される石碑や石塔 我が国における神々の共生の姿が

地域神社の調査でまちあるきをしていると、今でもふと、路傍の石碑や石祠(せきし)、石像などに目を奪われることがある。小生が幼い頃、お盆に家族でお墓参りをした帰り、村境にあった石碑の存在が気になったことがあった。その石碑が何であるかを父に尋ねると、それは「サイの神さん(サイノカミ)だよ」と教えてくれた。さらに父は、石碑の近くに据え置かれていた力石(ちからいし)の意味合いに触れ、かつてこの石を用いてムラの力持ちを決めるために、村の若者らが集まって力試しを行い、その様子を見物する人々で賑(にぎ)わっていたという民俗行事の様子をも付け加えて話してくれたのを思い出す。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(12) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

相撲の歴史と神道の関わりをひもとく 五穀豊穣を祈念し、豊凶を占う神事

毎年、新春の初詣が一段落つく頃になると、明治神宮の拝殿前で大相撲の横綱力士による「手数入(でずい)り」と呼ばれる奉納土俵入りが行われる。コロナ禍で昨年は中止されたものの、毎年一月五日から八日頃の、大相撲の初場所前に実施される行事で、本年は場所後の二月一日に行われた。テレビのニュース番組等で報道され、また、三月の大阪場所後の春巡業に際しても伊勢神宮や靖國神社で奉納されているので、読者にはご存じの方も多いだろう。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(11) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

あらゆる場所に神を祀り安寧を願う 現代社会における鎮守の神の在り方

明治四十五(一九一二)年、文部省発行の『尋常小學唱歌(第三學年用)』(音楽教科書)に掲載された「村祭」の歌詞の冒頭に、「村の鎮守」という言葉が登場する。「村祭」は、GHQ(連合国軍総司令部)による占領下の昭和二十二(一九四七)年に三番の歌詞の一部に改変がなされたものの、戦後も長く歌い継がれてきた唱歌であり、読者の方の中にもかつて、小学校時代にこの唱歌に触れた方がいるだろう。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(10) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

いつの時代も感染症の厄難に対し、防疫を願う人の心に寄り添う神社

今年のお正月の初詣は、例年の光景とは大いに異なる様相であった。明治神宮や成田山新勝寺、川崎大師などをはじめ、東京や大阪、京都など各地の有名な社寺で「一月一日の参拝者が昨年比で何割減少した」などと、社頭の様子を新聞やテレビ等のマスメディアが報じた。昨年一月末から続く新型コロナウイルスの感染拡大は、従来の元日風景までも一変させたのである。例年、三が日の参拝者が三百万人を超える明治神宮では、新型コロナウイルスの感染防止策の一つである「密」を避けるために、大晦日(おおみそか)の夜から元旦までの夜間閉門が実施されたことは、読者の方々も記憶にあるだろう。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(9) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

工匠の技により築き上げられた「文化共存の姿」を後世に継承し

やや旧聞に属するが、令和三(二〇二一)年二月十三日付の「毎日新聞」朝刊に、岡山県岡山市北区にある国宝・吉備津神社拝殿や県指定文化財の廻廊(かいろう)に傷を付けた男性が、文化財保護法違反の疑いで逮捕されたとの報道があった。平成二十七(二〇一五)年にも十六府県四十八カ所の社寺の楼門(ろうもん)や柱、賽銭箱(さいせんばこ)などにお清めと称して油をまいた行為により、日本国籍を持つ米国在住の医師の男性が建造物損壊容疑で逮捕されたことがあった。社寺のように古くから人々に信仰され、我が国の伝統文化を継承するものとして大切にされてきた伝統的建造物を損壊、汚損する行為は決して許されるものではない。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(8) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

神前を守護するさまざまな「神使」 地域神社の由縁や人々の祈りが形に

地域神社の調査を行うと、個々の神社の境内にある建物や鳥居、灯籠、狛犬(こまいぬ)など工作物のわずかな差異に驚かされることがある。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(7) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

元気な子供の声が聞こえてくる 鎮守の森・神社での「人間教育」

埼玉県越谷市越ヶ谷に大国主命(おおくにぬしのみこと)、言代主命(ことしろぬしのみこと)を主祭神としてお祀(まつ)りする久伊豆(ひさいず)神社という古社がある。創建時期は不詳とされるが、平安中期以降から旧武蔵北部を中心に、武士や庶民の信仰を集めてきた社(やしろ)である。境内の片隅には「平田篤胤仮寓跡(ひらたあつたねかぐうあと)」と呼ばれる旧跡や篤胤奉納の大絵馬があることで知られ、国学者の平田篤胤とも由縁の深い社でもある。現・越谷市の中核となった旧・四丁野村、越ケ谷宿、大沢町、瓦曽根(かわらぞね)町、神明下村、谷中村、花田村の七カ所の鎮守の社として知られている。加えて八方除(はっぽうよけ)、除災招福の霊験あらたかな神社として有名で、祈願のために関東一円のみならず、遠方から参詣する崇敬者も多い。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(6) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

少子高齢化の進行と過疎化に伴い、地域の宗教施設が直面する課題

現代の日本は少子高齢化が進行しており、同時に地方では過疎化の問題が深刻化している。厚生労働省が毎年九月に発表する人口動態調査の直近の概況では、一昨年の新規出生数が前年比で5万3161人減少して、過去最少の86万5239人であったという報道がなされた。小生は大学教員でもあるので、後に子供たちを学生として受け入れることになる大学側の立場としては、特にコロナ禍の中にあって昨年一年間の新規出生数が今年の発表から、今後どのように変化してゆくのか、18歳人口の増減とともに気になる話でもある。

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