スーダン首相がWCC訪問(海外通信・バチカン支局)

イドリス首相(左)とピレー総幹事(WCC提供)

アフリカのスーダンでは、1956年のイギリス・エジプトによる共同統治からの独立以来、断続的に内紛が続いていた。そして、イスラーム原理主義を基盤とし、世界最悪の人道危機と呼ばれたダルフール紛争などで国際的な批判を浴びたオマル・アル=バシール独裁政権が30年以上続き、それに反対する民衆蜂起が2019年に始まった。2021年には同国軍と民兵組織の即応支援部隊(RSF)が結束してクーデターを起こし、同政権を崩壊させた。

以来、国軍を中心に軍事政権から民政への移管プロセスが進行されていたが、RSFの国軍への編入問題がこじれ、両軍が権力闘争を展開するようになり、2023年には、再び内戦状態に陥った。RSFは、バシール独裁政権の支援を受けながら、ダルフール紛争における反政府分子を抑圧するために創設されたアラブ人の民兵組織で、同紛争で非アラブ系住民を虐殺したと非難を浴びていた。2年間にわたる内戦の末、6万人の死者、1100万人の離散者(2025年1月現在)を数え、国連筋によれば「人類の記憶する限り、最悪の人道災害の一つ」とのことだ。

スーダンは、アフリカ大陸における有数の金産出国だが、敵対する双方の軍事組織が金を資金源としており、内戦の原因ともなっている。だが、同国の金の採掘権を握るのは、ロシアとアラブ首長国連邦(UAE)の企業であり、両国が内戦に関与しているとも見なされている。2025年末現在、国軍がスーダン北・東部、RSFが西部を傘下に置き、闘争を続けている。

バチカンの公式ニュースサイトである「バチカンニュース」は2月14日、スーダン内戦中に15のモスク(イスラーム礼拝所)が砲撃され、165のキリスト教諸教会が破壊・閉鎖されたと報じている。宗教施設に避難している子どもたち、医療従事者、そしてダルフールの難民キャンプなども攻撃の標的となっているとのことだ。「バチカンニュース」によれば、欧州連合(EU)、国連、アフリカ統一機構(OAU)、アラブ連盟(LAS)などが、イスラームの断食月(ラマダン)期間中の「人道停戦」を訴えている。

だが、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は2月13日、RSFが昨年10月に西部のダルフール地方で6000人以上を殺害したとの報告書を公表し、戦争犯罪のほか、人道に対する罪が疑われる残虐行為だと非難した(14日付「47ニュース」)。

内戦に飢饉(ききん)が重なり、未曽有の人道災害に直面するスーダンで、和平と和解を模索する同国のカミール・イドリス首相は、国連欧州本部(ジュネーブ)を訪問した際、世界教会協議会(WCC)本部で同協議会の責任者たちとも懇談した(2月5日)。

イドリス首相はスーダン共和国の代表団と共に、ピレー総幹事およびWCCの他の代表者と会談した(写真はWCC提供)

WCCのジェリー・ピレー総幹事は、「平和の達成と共通善に向けて協調し、努力を続けていくことの重要性」を強調しながら、イドリス首相を迎え入れ、「私たち信仰者は、正義と平和のために、相互の連帯に立脚し、祈りを通して支え合いながら、社会的・経済的に、より傷つきやすい人々、離散者、危機と災害によって生活の術(すべ)を失った人々を支援していかなければならない」と呼びかけた。ピレー総幹事は、「キリスト教徒とムスリムが共に祈る重要性」についても訴え、「WCCが、正義、和解、一致、人間の尊厳性と人権という、自身にとっての本質的な使命を遂行しようとする、スーダンと南スーダンの全ての教会と国民への連帯、支援、祈りを捧げる」と約束した。

「スーダン政府の執(と)っている和平イニシアチブ」について説明したイドリス首相は、2026年前半に予定されている「第1回スーダン和平会議」にピレー総幹事を招待した。スーダン政府の提唱する和平プロセスは、共同体の和平、和解、癒やしを目的とする包括的なイニシアチブであり、国連、国際・地域組織、支援友好諸国と協力しながら展開され、戦争の影響の軽減、社会的絆の再構築、健康な社会環境の建設など具体的なプロジェクトをも推進する。「スーダンが存亡の危機に瀕(ひん)している」と警鐘を鳴らすイドリス首相は、政府のイニシアチブによって、諸政治勢力間での国家統治と管理に関する合意を成立させることで、国際管理下での自由で公正な選挙へと導き、包括的な民主体制への移行を図る意思を表明した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)