「『COP28』に向けて世界の諸宗教指導者による『良心の合流点会議』開催」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

人質解放のために始動するバチカン外交

ローマ教皇フランシスコは10月11日、水曜日恒例であるバチカン広場での一般謁見(えっけん)の終わりに、イスラエルとパレスチナで起きている紛争に対する「苦痛と憂慮」を表明しながら「人質の即時釈放」を訴え、「攻撃された側の防衛権」を擁護した。ガザ地区からイスラエルを攻撃するイスラーム過激派組織ハマスが、約130人のイスラエル人を拉致しているからだ。

また、無実の犠牲者が多く出ている、ガザ地区のイスラエル軍による「全面包囲」に対する「憂慮」も表明。さらに、「テロや過激主義は、イスラエル人、パレスチナ人の間で紛争解決をもたらす助けとはならず、憎悪、暴力、報復を助長し、相互を苦しめるのみ」と戒め、「中東は戦争を必要としておらず、正義、対話、友愛を追求する勇気を基盤とする平和を必要としている」とアピールした。

「人質の解放」「イスラエルの防衛権」「テロ攻撃の糾弾」を主張した教皇のスピーチを受けて、イスラエルとハマスの間でバチカンの立場が明確でないと批判していた在バチカンイスラエル大使館は、「今回の教皇のスピーチによって疑いが晴れた」とする談話を公表した。

バチカンとイスラエル大使館の和解を再確認するように、バチカン国務省長官のピエトロ・パロリン枢機卿は14日、同大使館を訪問して大使と懇談した。この報道と併せて「バチカンメディア」は、パロリン枢機卿のインタビュー記事を配信。この中で、ハマスに拉致されているイスラエル人の人質問題について質問を受け、「聖座(バチカン)はいつものように、あらゆる必要な調停のために乗り出す準備をしており、各方面と対話していくチャンネルをすでに開放している」と述べ、バチカン外交が人質解放のために始動していることを明かした。

バチカン外交は、ウクライナ侵攻でロシアによって大量に拉致されているウクライナ人の子供たちの帰還という人道問題を中心に、「ウクライナ和平交渉に向けた道ならし」を試みている。今回は、イスラエル人の人質解放に貢献することで、中東和平に向けた道のりを開拓していこうとしているのだ。

教皇は15日、毎週日曜に行われるバチカン広場での正午の祈りの席上、「人質の釈放」と併せて、ガザ地区での「人道法による権利の尊重」「人道回廊の開設」を訴えた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)