英国諸宗教者による生活困窮者支援「暖房付き歓迎キャンペーン」(海外通信・バチカン支局)

欧州諸国はこれまで、産業や国民の日常生活のエネルギー源として、ロシアからの天然ガスや石油の輸入に強く依存してきた。しかし現在、ウクライナ侵攻を通したロシアからの揺さぶりを回避するため、他の地域からの供給を模索している。

天然ガスに関しては、欧州連合(EU)諸国のほとんどが今年の越冬に必要な消費量の90%前後の備蓄を達成しており、心配はないといわれている。だが、代替となるエネルギー供給源を探すためには長い時間を必要とするため、天然ガスや石油の値段が高騰し、それとともに、公共料金を含めたあらゆる分野で値段が上がり始め、インフレに火が点(つ)いた。

イタリアでは、インフレ率が2桁台に迫っている。それとともに、新型コロナウイルスの「パンデミック」(世界的流行)の影響で危機に追い込まれていた市民生活がさらに苦しくなり、貧困層が急増している。欧州各国の政府も、国家予算案の中で、公共料金の高騰に対する国民への支援策のために巨額の資金拠出を迫られており、貧困層への支援を思うように実現できないのが現状だ。

英国ではこのほど、「1640万人が暖房無しでの越冬を強要されている」という統計が公表された。イタリア・カトリック司教会議(CEI)の通信社「SIR」が11月21日に報じた。同統計によれば、「700万世帯が暖房無しでの越冬を強要され、その世帯数が2020年比で倍増している」とのことだ。また、暖房無しの生活を強いられて死亡した人の総数が、「1万1400人」に上るとも推定されている。生活困窮者を支援する「社会センター」の数も、国内で2500カ所を超え、パンデミック以前に比べて14%増加したという。

また、英国は2020年に欧州連合(EU)を離脱して以降、厳しい経済危機が市民生活を襲っている。こうした状況を受け、英国の諸宗教団体ではこのほど、生活困窮者の支援に心を砕き、「暖房付き歓迎キャンペーン」(Warm Welcome Campaign)と題したイニシアチブを開始した。英国内2500のキリスト教諸教会と、イスラームのモスク(礼拝所)、ユダヤ教のシナゴーグ(礼拝所)、公立図書館や社会センターが協力。家で暖房を使えない人々に対して、「暖かくした礼拝所や関連施設を開放し、コーヒー、お茶、ビスケットを無料で提供する。また、インターネットへのアクセスやテレビの視聴も可能で、一時の暖をとってもらう」という取り組みだ。

「英国ムスリム評議会」は、全土で500を超えるモスク、慈善事業施設、学校を開放し、このイニシアチブに参加するという。「地方共同体管理の図書館ネットワーク」や、カトリック教会の救援機関である「カリタス社会活動ネットワーク」なども参加を表明。リバプールのカリタスは、40の教会ホール、社会活動室、その他のスペースを、午後1時から3時30分まで暖めて歓迎するとのことだ。

ロンドン中心部で救援活動を展開する「ウェストミンスター大司教区のカリタス」は、「暖かい歓迎」を提供する小教区やグループに対して、1000ポンド(約17万円)の支援金を供与することを決議している。

同キャンペーン本部は、イニシアチブに参画する宗教団体、施設、グループの所在地を記した地図をウェブサイトに掲載し、最寄りの場で「暖かいひとときを過ごすように」と呼びかけている。だが、公共料金の高騰は続いており、支援活動を行う諸宗教者たちの頭を悩ませている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)