信教の自由に向けた法制度の改革を――ASEAN国会議員グループ(海外通信・バチカン支局)

東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10カ国の国会議員で構成される「人権擁護のためのASEAN国会議員グループ」がこのほど、『規制の多様性――信教と信仰の自由に関する法制度の概観』と題したレポートを発表した。ASEAN加盟国の政府に対し、「信教の自由の保障、宗教的少数派の擁護を促進し、『公共の秩序』『(社会の)調和』といった理由で基本的人権に関する規制の強要を正当化しないように」とアピールした。ローマ教皇庁外国宣教会(PIME)の国際通信社「アジアニュース」が11月19日に報じた。

同リポートは、ASEANが55年前に設立されて以来、圏内の通商、税関、人の往来などに関して具体的な進展があったと評価。一方で、「政治的一致、民主主義や人権に対する認識差の克服、国内、国際危機への対処に関する見解の統一といった分野において、その実現からは程遠い」と批判している。

さらに、“宗教という切り札”が、「国家のアイデンティティーを正当化したり、愛国主義を煽(あお)ったり、少数派を差別したりするために使われている」と指摘。「国家の安全保障、公共の治安維持」といった理由が、「往々にして、少数派の自由を限定するために使われ」「特定宗教の侮辱法が、国家、政府、多数派の宗教制度に批判的である少数派の宗教グループを犯罪組織と見なすために利用されている」と訴え、そうした法制度が「人権に関する国際基準からは程遠い」と非難している。

また、同グループの国会議員たちは、こうしたASEAN諸国での人権問題の分析を基盤に、政府や立法機関に対して、「国の憲法で保障されていながらも、実際には自由を侵害する法制度を廃棄、変革し、より開放された、連帯的、包括的な社会をつくっていくように」と訴えている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)