「英国の諸宗教指導者がCOP26に向けて声明文」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

国際的な危機に対して新たな多国間主義を――イタリアのドラギ首相

20カ国・地域首脳会議(G20)の議長国を務めるイタリアのドラギ首相は9月24日、米国ニューヨークで開催されている第76回国連総会にビデオメッセージの形式で演説を行った。

この中でドラギ首相は、10月30、31の両日にローマで予定されているG20特別会合のテーマについて説明。「アフガニスタン問題、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)との闘い、気候変動といった世界レベルでの挑戦には一国で対処できず、新たな多国間主義が必要とされる」と訴えた。

さらに、アフガニスタンでは「冬の到来と共に人道危機が一気に悪化しかねない」と憂慮の念を表明。アルカイダや、「イスラーム国」(IS)を名乗る過激派組織の系列グループのテロや攻撃によるアフガニスタン情勢の変化が、国際的な安全保障を脅威に陥れる危険性を示した。「テロの再燃」と同時に、同国の社会や市民は「大災害」に直面するからだ。加えて、「タリバン新政権は、国内のさまざまな民族、社会、宗教を構成する人々を代表していない上、過去20年間にわたり促進されてきた基本的自由、特に女性に対する自由が脅かされている」として、その正当性に異議を唱え、政治姿勢を非難した。

また、新型コロナウイルスとの闘いはいまだ終わらず、ワクチン接種によって通常の生活に戻れるかのような希望を与えているが、実際には低所得国での接種は停滞したままで、この現状は「倫理的に容認できない」と発言。高所得国では人口の約65%が1回目の接種を受けているのに対し、低所得国では2%にすぎないと説明し、ワクチン配布の不平等を問題視して改善を訴えている。

こうしたワクチン接種の状況が、諸国間の社会的、経済的な格差をさらに助長すると指摘。「イタリアは、貧しい国々、特に世界の安全保障と経済発展にとって、より中心的な役割を果たしていくアフリカ諸国に対する支援を行う」と明かし、開発途上国の債務について協議が必要と語った。

気候変動に関しては、「地球環境、経済、次世代の人々を守るため、すぐに行動を起こさなければならない」と強調。「地球を受け継ぐ若者たちの声に耳を傾けることは、私たちの義務である」と述べた。

ドラギ首相は9月29日の記者会見の席上、G20の特別会合に先立ち、10月12日に「G20首脳会議を開く」と公表した。オンラインによる会合と予想されている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)