大衆扇動主義と人民主義の違い――コロナ後の世界に向け教皇が新回勅(2) 海外通信・バチカン支局

第5章は、「より良い政治」についての分析だ。政治家が自身への支持を得るために国民を“道具”と見なし、知名度を高めるために人々の利己主義をあおることによって「国家の正当性を無視」するポピュリズム(大衆扇動主義)と、「愛徳の最も高貴な形の一つ」として共通善(公共の利益)に奉仕し、「交渉や対話に応じる、開かれたグループである国民の重要性を認知するポピュラリズム(人民主義)を対比して考察している。その上で、より良い政治とは、社会にとって不可欠なものであり、全ての人に自身の能力を高める可能性と雇用を保障するものだと記された。

バチカン「広報のための部署」が公表した新回勅の要約文には出てこないが、アルゼンチン出身の教皇が主張する「人間――人格完成のための労働の重要性」という確信は、第二次世界大戦後に同国で広まった「ペロン主義」に由来するといわれる。貧者に対する支援は、「一時的な財政的援助」だけでなく、「労働を通して人間にふさわしい生活を送れる機会の提供」が重要なのだ。さらに、政治の課題は、社会的排除、臓器などのヒト組織や細胞の売買、兵器、ドラッグ、性的搾取、児童労働や強制労働、テロ、組織犯罪といった基本的人権を侵害するあらゆる問題に対し、解決策を見いだしていくことにもある。教皇は、人身取引を「人類の恥」、飢餓を「奪うことができない権利である食糧へのアクセスを否定する犯罪」として強く非難する。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)

※記事はバチカン「広報のための部署」が公表した教皇新回勅の要約文を参考にしています。カッコ内の引用文は要約文からのものです