「『人類のための祈り、断食、嘆願の日』に共に祈りを」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
イタリア政府がミサの執行を許可
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、一般信徒が参加するミサや秘跡(洗礼、聖体、告解など)の執行を中止していたイタリアで、5月18日からそうした一連の宗教行事が再開されることになった。5月7日に首相府で、コンテ首相、ラモルジェーゼ内相、カトリック・イタリア司教協議会議長のグアルティエロ・バッセッティ枢機卿による会合が開かれ、執行を許可する合意書に署名して決定した。
同国では、同ウイルスの新規の感染者、入院患者、集中治療を受ける重症者の総数が減少傾向にある。合意書によると、18日からはミサの際、教会入り口で参加者の検温を実施し、37.5度以上の体温がある人、同ウイルス感染症の兆候がある人の入場を禁止する。信徒が教会内に入る時は、指を聖水に浸さず、十字を切る(洗礼盤に聖水を入れない)こととなった。
また教会内では、マスクの着用を必須とし、人との間隔を約1メートル以上空けるよう徹底。賛美歌はオルガン奏者の演奏のみとし、聖歌隊の参加を禁止した。司式者の数も最小限とし、事前に手を消毒して、ミサ中はマスクと手袋の着用を義務化。聖体(キリストの身体とされるパン)は、信徒たちの口ではなく手に渡され、平和の握手も禁止した。閉式後には教会内部と使用した法衣、典礼書、器具の消毒を必須とした。「ゆるしの秘跡」は、換気のいい、広いスペースで執り行うことを条件とした。
カトリックの儀式が再開されるには、政府との間でさまざまなやりとりがあり、「一筋縄ではいかなかった」といわれる。
20日前の4月17日、ローマ教皇フランシスコは、バチカンにある居所「聖マルタの家」で開いた朝のミサの冒頭、「皆が共にいない、コミュニティー、教会、秘跡のない交わりは教会と言えない」と述べ、インターネットを通したミサへの参加や交流を続けることは教会の危機との認識を示した。「私たちは、このトンネルから脱出しなければならない」と語り、信徒が一堂に会するミサの再開を訴えていた。
一方、同26日、コンテ首相がロックダウン(都市封鎖)を5月4日から段階的に解除する首相令を公布。製造業や建設業などの生産活動の再開、公園や庭園の開放、個人による屋外での運動や散歩を許可し、州内での移動の禁止を緩和すると発表した。葬儀も、参列者を15人以下にすることとした。だが、カトリック教会の儀式の再開に関する言及はなかった。
これを受けて同協議会は直ちに、「イタリアの司教たちは、典礼(儀式)の行使の自由が無視されていることを黙認できない」と訴える声明文を公表。カトリック教会は、医療危機に対処するため政府の規制を順守してきたと強調し、「今回の首相令は、(神の)民と共にミサを執行する可能性を意図的に排除している」と非難した。
同声明文の発表から2日後には、教皇が朝のミサの席上、「封鎖解除への動きが始まった今、神が、彼の民(イタリアの教会)に用心深さと、世界的流行の再発を防ぐ(イタリア政府の)対策の尊重という恵みを与えてくださるように祈ろう」と呼び掛けた。
こうした経緯を経て、政府と同協議会の間で話し合いが持たれ、今回の合意書の成立に至った。合意書の主な内容は、国内の他の宗教に対しても適用される。