宗教の未来について 仏教伝道協会がシンポジウム

永野氏は、宗教は物事を考える上でのヒントにはなるが、答えではないと指摘。個人の考え方が違うように、教えの受けとめ方も個々に違うため、さまざまな人と会話をし、自分とは別の視点や宗教で、自身の思想をブラッシュアップしていく必要性を訴えた。さらに、「人生で困ったら宗教に頼る」ではなく、日常的に信仰していくことで不安に陥ることが減り、自分を高めることにつながると説いた。

このほか、永野氏は祈りや自身を見つめる場として固定の場所は必ずしも必要ないと発言。ムスリムは世界各地にあるどこのモスクで祈りを捧げても抵抗感はなく、宗教コミュニティーの形成にあたっても場所に縛られることはないと解説した。「現代では、施設を維持するのは大変ですし、交通費もかかります。インターネットでもつながれるのですから、ハード面にこだわる必要はないと思います。これからは皆でVR(仮想現実)で交流する時代も来るのではないでしょうか」と持論を語った。

晴佐久氏は、人は一人では生きられず、他者とのつながりを持つことで幸せを感じられるとし、宗教にはその要素があると回答。不安な気持ちを抱えた時は、一人で悩まず、手をとり合える「血縁を越えた家族」の存在が大切になると説いた。

さらに異なる宗教間のつながりが今後一層、重要になると強調。宗教の未来は、特定の宗教がつくるものではなく、原理主義を越えて、普遍主義を目指し、共につくり上げていくものと訴えた。「『教会は野戦病院であれ』といわれています。目の前で血を流している人がいれば、手を差し伸べる。それは、何教も何宗も関係ありません」と話した。