宗教の未来について 仏教伝道協会がシンポジウム

『宗教の未来を話そう』をテーマに、公益財団法人・仏教伝道協会によるシンポジウムが2月27日、東京・港区の仏教伝道センターで行われた。臨済宗妙心寺退蔵院の松山大耕副住職、浅草神社の矢野幸士禰宜、ムスリムのナセル永野氏、カトリック浅草・上野教会の晴佐久昌英主任司祭がパネリストとして登壇した。

冒頭、各パネリストに「宗教は『どうやって考えたらいいか』のヒントになりますか」「不安な気持ちを抱え、何か信じたいという心に対して宗教が果たす役割は何だと思いますか」「あなたが思う宗教の未来像とは」という三つの質問が投げ掛けられ、意見が交わされた。

この中で松山氏は、宗教の歴史は長く、生きる上で智慧(ちえ)や道徳観が教えに凝縮されていることから、物事を判断する基準として大いに役立つと強調した。また、求められる宗教の役割について言及し、昨今のニュースで政治や企業、学校でのさまざまな不正が取り上げられているが、自律的に不正をなくすことができるのは宗教であると説明。第三者が決めた法律や社会的ルールに従うだけでなく、神や仏など大いなるものへの畏敬の念によって人々が正しく導かれ、自身の心から湧き起こる規律こそが不正への対処になると語った。

一方、矢野氏は、神社は古来、普遍的かつ清浄な存在として保たれるからこそ、現在も「安心の場」として、地域の人々の心の依りどころになっていると回答。しかし、全国には8万社があるが、神職は2万人であるとの統計から、30年後には3割の神社の存続が厳しくなるのではないかとの見解を発表した。人生や一年の節目に、さらに祭祀(さいし)などで人々が訪れる神社を、地域住民が集まる場として守り続けるとともに、普段の生活の中でも立ち寄りやすい場をつくり上げていくことが重要になると語った。

また、祈願についても触れ、自分の力だけではどうにもならないと感じた時に人は神に願うものだが、その時に感謝を忘れてはならないと主張。人は感謝を表すことによって謙虚になり、寛容な心が形成され、違う立場の人を認めて、争いがなくなるからと語った。

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