仏教と自死に関する国際シンポジウム(関西版) 佐々木閑氏が基調講演

佐々木氏は、防犯カメラやドライブレコーダーに加え、「モノのインターネット」(IoT)や人工知能(AI)など人の行動を記録する技術が発達し、記録した行動をビッグデータとして管理する仕組みづくりが進んでいる現状に言及。これらは、生活の利便性を高める一方、人々の生活をあらゆる面から監視し、情報を蓄積するシステムであり、将来、ビックデータから探し出そうとすれば、あらゆる人の全情報があらわになる危険性を詳述した。

さらに、保存されているデータには、過去に先祖が起こした犯罪も含まれると指摘。そうした情報が明らかにされれば、世代を超えて子孫に悪影響を及ぼしかねず、本人にとっていわれのない差別がまん延するのではないかと懸念を示した。

こうした状況に対し、仏教は、これと似た現象を解決するアプローチを有していると紹介。仏教の「カルマ(業=ごう)」の考え方に触れ、その特徴は、善悪を問わず全ての行為は「記録」に残り、それらが原因となってもたらす結果はいつ訪れるか分からず、しかも結果と原因の現象に類似性がないことを説明した。

その上で、インターネットが影響する業を「ネットカルマ」とし、技術の発達によって、自分の行動が全て監視されるストレスや先に示した身に覚えのない中傷や差別に苦しむ人が増加して、新たな形の自殺志願者が増えると警告。「仏教は、2500年前から、カルマの力から開放される方法を積み重ねてきました。ネットカルマに対しても、苦しまない方法や、自殺志願者を救う手助けが秘められていると思います」と語り、宗教の役割を強調した。

最後に、5日間の議論を基に、声明文が発表された。

5日に発表された声明文(※クリックで拡大)