こども食堂から築く共に生きる社会(1)  文・湯浅誠(認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)

画・福井彩乃

あけましておめでとうございます。

昨年、こども食堂をテーマに1年間連載させていただきましたが、今年も連載させていただくこととなりました。改めて、よろしくお願いします。

昨年は、こども食堂の実態を知ってもらうために、現場のエピソードを中心に、どんな人たちがどんな想(おも)いで運営しているのか、どんな人たちが来ていて、そこでどんな変化が生まれているのかといったことをご紹介してきました。今年は、やはり現場のイメージを持ってもらうためのエピソードは大事にしつつも、やや昨年よりも一歩引いたところから、私自身とこども食堂の関わりや、こども食堂をとりまく社会のありように関する私の考えなども含めて、お伝えしていきます。

昨年末、私たちは、こども食堂が全国でいくつに達したか、その数(箇所数)の発表を行いました。速報値ですが、6千カ所を超え、6007カ所となりました。その前の年が4960でしたから、1年で1047カ所増えたことになります。毎年この調査を行って、調査のたびに驚いているのですが、今年も私はとても驚きました。2021年は、前年以上にコロナ一色の年でした。東京などは10月までほぼ一年中、緊急事態宣言下だったと言ってもよい状態でした。そのような状況下でも1千カ所以上増えているとは思わなかったからです。

実は、この調査は全国で唯一私たちだけが行っているもので、私は調査のたびに、出てくる結果に驚いています。その意味で、とても大切に、そして楽しみにしている調査です。

最初に調べたのは2018年でした。2016年に319カ所と新聞社が調べて発表してから2年が経っていました。その間、あちこちで「新しいこども食堂が生まれた」という話を聞いてきましたから、関係者の間ではずいぶん増えたんじゃないか、と話されていました。でも、じゃあいくつなのかと言うと、誰もわかりません。「500くらいかねえ」「いや、ひょっとしたら1000になってるかもよ」という感じでした。そこで、私が一念発起して調べ始めたのが、最初のきっかけでした。調べると言ってもどうやって調べるのか――決まった調べ方があるわけではありません。学校や保育園のような公的サービスならば行政が把握しています。また、コンビニや牛丼店のような全国チェーンであれば本社が把握しています。でも、こども食堂は、そのどちらでもありません。

私たちにあるのは「ネットワーク」、平たく言えば「人脈」だけでした。私は講演などで全国を回ります。毎年全47都道府県に最低1回行くくらいは各地に出向いています。行った先でこども食堂の方と出会う機会も多く、私には全国に「こども食堂関係の知り合い」がいました。また、2016年から2018年まで、私は他の人たちと一緒に「広がれ、こども食堂の輪!」全国ツアーというのを実施しており、そこで出会った人たちもいました。そのため、その人たちに声をかけるところから始めました。「そちらの県では、今、こども食堂は何カ所になってますか? 知ってますか? 知ってたら教えてください!」というように。続々と集まってきた数字を足していくと仰天の事実があったのです……。(つづく)

プロフィル

ゆあさ・まこと 1969年、東京都生まれ。東京大学法学部を卒業。社会活動家としてホームレス支援に取り組み、2009年から3年間内閣府参与を務めた。現在、東京大学先端科学技術研究センター特任教授、全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。これまでに、「こども食堂安心・安全プロジェクト」でCampfireAward2018を受賞した。