TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・亀居優斗さん Vol.3
多種多様なものから吸収を
――この連載の読者には、多くの中高生がいます。亀居さんが中高生だった時、自身の音楽性を磨くためにどのようなことをしていましたか?
中学生の頃は、顧問の先生が部室に吹奏楽のCDだけでなく、金管や木管の重奏曲のCDも置いてくれていて、それを借りて聴いていました。それだけでは満足できず、インターネットを利用して、「吹奏楽」と打ち込んで検索し、動画も片っ端から視聴しましたね。他校がコンクールで演奏した曲を収録したCDも手に入れました。本当にいろいろなものを聴いて吸収しようとしていました。練習は大事ですが、他の人の演奏を聴くことも必要です。
中学2年生の時のコンクールでは県大会に出場できなかったので、勝ち進んだ人たちの演奏を聴くために、お小遣いをはたいて大会に足を運びました。会場では、金賞を受賞した学校のコンクールでの演奏を収めたCDが販売されていて、それを買って帰りました。出場した学校が記念として買うようなCDなんですけどね。「僕たちが行けなかった大会に、この人たちが行ったんだ」という本来なら悔しいはずのCDですが、リードミスをするタイミングを覚えるほど何度も聴いていました。
生演奏もよく聴きました。地元の名古屋フィルハーモニー交響楽団が毎月、演奏会を開催していたので行っていたのです。高校生の時には、授業をさぼって全日本吹奏楽コンクールの全国大会に行きました。悪いことなので、決してまねしてほしくないのですが……。その頃は、東京の普門館から名古屋国際会議場に会場が移ったばかりの時でした。もちろん、授業をさぼったことが学校の先生にばれ、怒られてしまったのですが、よく言えば、好奇心旺盛だったと言えますね(笑)。
そうやって吹奏楽にどっぷりはまっている学生生活でした。ただ、“ブラスっ子”だったせいか、友達とは音楽の話をしても合わないことがよくありました。学生の頃は、はやりの曲は全然聴いていませんでしたから。ミュージックプレイヤーの中身は全部吹奏楽で、登下校や塾の行き帰りに聴いていたんですが、一緒に塾に行っていた友達に「何を聴いているの?」と聞かれて、「ブラス」って答えたら、「キモイ(笑)」と言われてしまいました。運動部に所属している子だったので、きっと、それは普通の反応だったんですよね。その言葉にとてもショックを受け、はやりの曲やポップスを聴かなければいけないと思って調べることはしましたが、仕方なく、という思いでした。最近は、東京藝術大学の学生だった先輩が「King Gnu」というバンドに所属していて、親近感が湧き、J-POPですが、曲がとてもいいので少しずつ聴くようになっています。
――吹奏楽に励む中学生、高校生にメッセージを
学生の子たちには、「いろんな人の演奏、たくさんの演奏を聴きましょう」と伝えています。同じものばかり聴いてしまうと、情報が偏ってしまいます。YouTubeなどで聴くのもいいですし、演奏会に行くのもいい。それがクラシックでも、ポップスでも、ジャンルは何でも構いません。そこで得たものが、何かしら自分の演奏に還元されると思います。
現在は、新型コロナウイルスの影響でコンクールが中止になり、部活動で今まで通りに活動できない人たちもいますよね。自分で練習するしかありませんが、楽器を演奏すること以外でも、例えば、さまざまな演奏を聴いて音楽性を磨くことはできるので、自身の成長のために吸収できそうなものを見つけて、通常に戻れた時の糧にしていってください。
プロフィル
かめい・ゆうと 1995年、愛知・春日井市生まれ。2018年に東京藝術大学を卒業後、東京佼成ウインドオーケストラに入団。第15回クラリネットアンサンブルコンクール・一般部門で1位を獲得した。その後、第87回日本音楽コンクール・クラリネット部門に入選し、第17回東京音楽コンクール・木管部門で第3位、聴衆賞、第30回日本木管コンクールで第2位を受賞した。