TKWO――音楽とともにある人生♪ オーボエ・宮村和宏さん Vol.3
オンとオフを切り替える“キー”
――葉巻を吸うことで「強制的な休みを取ることにしている」と言われますが、そうしなければならないことがあったのですか
それはですね、数カ月間、休日が無いという状態が、よくあるんですよ。最も休日がなかった期間は3年前、2017年8月から翌年2月までの約7カ月間です。自業自得なんですけど、仕事の依頼を受け続けて、気づいたら休みがありませんでした。この業界で生きていて、休みがないぐらい忙しいというのは有り難いことなのですけど……。休みがあるから、心身を整えることができ、そして次に動けるというのもありますよね。
例えばコンサートの前になると、良い演奏ができるかと心配になり、緊張状態が続いて頭が冴(さ)え、眠れなくなってしまいます。たばこと違って、葉巻はチェーンスモークにはなりません。1日に1本か2本を吸い、その1本も30分から1時間、モノによっては1時間、モノによっては1時間以上かけて吸います。その時間は、良い香りを嗅(か)いで、ホッとできる。身体から緊張が抜け、ストンと休息モードに切り替わります。
本当はうまくスケジュールを調整し、休日をコンスタントに取らないと、いつか倒れてしまうなと思っています。でもですね、うちの団員は、みんな売れっ子だから、大半がそんな感じです。オンとオフの切り替えに利用する“キー”となるものを、団員それぞれが持っています。
――最後に吹奏楽の練習に励む中学生、高校生にメッセージをお願いします
上達の秘訣(ひけつ)は、好きになることです。楽器や、楽器から奏でられる音色、ひいては音楽そのものを好きになってください。今回のインタビューで、良い演奏者、良い音楽家、良い芸術家という段階の話をしましたが、上達にも段階があり、そのスタートラインとして、自分の楽器を好きになることがあります。そして何より音楽を好きになって、音楽から幅を広げて、絵画なども含め、広く芸術を好きになれたらいいですね。
そうすると、人生が豊かになってくると思います。芸術は人間にとって、心地よいもの、楽しいもの、いわば良い意味での快楽です。人生にとってプラスになる快楽にあふれた毎日だったら、幸せじゃないですか。
中学校、高校で吹奏楽部に所属していても、卒業すると音楽そのものから離れてしまう人は多いようです。でも、できるならそうではなく、これからも音楽や芸術が自分の人生から外せないと思うぐらい、音楽を好きになってください。心底、楽しんでほしいです。
プロフィル
みやむら・かずひろ 1979年、兵庫・神戸市生まれ。2001年に東京藝術大学を卒業し、TKWOに入団。第3回高校生国際芸術コンクール、第69回日本音楽コンクールのオーボエ部門でともに1位を受賞した。アルバム「プロミネンス」(佼成出版社)、「マジック・オーボエ」(日本アコースティックレコーズ)をリリース。国内外のオーケストラの公演に客演首席奏者として参加し、昭和音楽大学、洗足学園音楽大学では非常勤講師を務める。ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングスによる楽器擬人化プロジェクト「MusiClavies」において、登場人物・ルルのオーボエ・ダモーレの演奏を担当している。