TKWO――音楽とともにある人生♪ オーボエ・宮村和宏さん Vol.3

「良い芸術家」を追求していく過程で、今の自分が「『良い演奏者』から『良い音楽家』に脱皮している最中だったらいいなと思っています」と話す宮村和宏さん。最終回では、TKWOが今年、創立60周年を迎えるに際し、副コンサートマスターとしての抱負、さらに音楽につながる日々の過ごし方について聞いた。

高みへ

――佼成ウインドは今年、創立60周年を迎えますね

60年という月日の中には、あまりお客さんが入らない演奏会がありますし、運営がうまくいかなかったこともあり、良い団体にしていこうと心がけても、成功ばかりではありませんでした。ですが、「高みを目指す」という目標は持ち続け、少しずつ成長していることを実感しています。

節目となる周年は、高みを目指しているそれまでの集大成を見せることが大切です。それまでの歩みをかみしめつつも、そこで止まるものではありません。ファンの皆さんには、今の私たちを感じて、さらにこれからに期待して頂けるような機会にできたらと意気込んでいます。

――「高み」とはどんなことですか?

聴いてくださる方々が感動する良い演奏のことです。私たちは常にそこを目指しています。

努力の積み重ねによって、当たり前の質を上げていくことが重要で、それを心がけています。今までできなかったことが普通にできるようになると、さらにちょっと頑張って上達してレベルを上げ、それがまた当たり前になって……。これを繰り返していきます。ですから、「高み」とはいつまで経ってもたどり着けないもので、その過程に大事な意味があると思っています。

そうした音楽に対する純粋な思いを大切にしていく。決して強制されるものではありませんが、佼成ウインドの団員は全員が「高みを目指す」意識は持っていると断言できます。

――音楽以外のことを聞きます。普段の生活で趣味はありますか

葉巻と料理が好きです。

料理については単純においしいものが好きで、飲食店でおいしかったものを見つけたら、それを自宅で作っています。実際には、その料理に近いものを作ると言った方がいいかもしれません。調理器具そのものも、その扱いも味付けもプロの料理人のようにはいきませんから、「これはうちにある調理器具じゃできないから別のもので代用して」とか、「この味付けは扱いが難しい調味料を使っているから使わずに、こっちの味の方向に変えよう」とか、目当ての料理に近いものを目指して、試行錯誤するのが好きなんです。

これは意外と、演奏する上での当意即妙につながっているんです。演奏の中で、他の奏者が演奏のアプローチを変えてきた時に「そうか、そちらがそう来るなら、次は自分がこうしたら、うまくいくんじゃないか」と瞬時に転換していく訓練につながります。音楽は、瞬間瞬間に生まれる芸術です。また、演奏中の奏者同士の受け答えで変化していくものです。演奏の微妙な加減を、料理で培っていると言うと、言い過ぎかな(笑)。

もう一つの葉巻は、単純に嗜好(しこう)品として好きというのもありますが、仕事に没頭してしまうタイプなので、あえて、強制的な休みの時間をつくるために吸うようになりました。

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