TKWO――音楽とともにある人生♪ ホルン・堀 風翔さん Vol.2

演奏環境を整える役割を担う

――今、楽団では、インスペクター(インペク)を担っていますね

そうですね。インペクとは、楽団員が演奏に集中できるよう環境を整える人のことで、休日の調整や練習・本番の時間管理などに関して楽団員の意向をまとめた上で、事務所側と調整する役割を担っています。僕は昨年から担当していますが、楽団員と事務所のスタッフとの間に立つので、正直、板挟みになることも少なからずあります。そんな時は、悩みつつも、どうすれば皆が納得できるのかを考え、先輩方が培われた佼成ウインドの温かな雰囲気を壊さぬよう、言葉を慎重に選びながら伝えるようにしています。

元々、人見知りな性格なので、いろいろな人と上手にコミュニケーションを取れているか不安ですが、基本的に皆さん優しいですから、業務上の問題が生じた時はインペクの前任者であるバリトンサクソフォン奏者の栃尾克樹さんにその都度、相談してアドバイスをもらいながら、手探りでやっています。

ただ、この役目を担う中で、自分の経験を生かせていると感じることが一つあります。それは、中学校時代にさまざまな楽器を演奏させてもらえた経験です。前回もお話ししましたが、部員が少ない中で演奏会に参加するため、どの部員も複数の楽器を担当していたのですが、僕自身もトランペットやホルン、打楽器などを演奏し、他の部員たちの苦労も聞いていましたから、楽器それぞれの大変さが肌で理解できるのです。

例えばトランペット。吹奏楽のトランペット奏者は高い音を出したり、重要なパートを任されたりと、楽曲の演奏中は、とにかく吹きっぱなしということが多く、疲労のたまり具合も他の楽器とは比べものになりません。一方、ホルンや打楽器には、そのパートでしか分からない心身の苦労があります。いくつかの楽器を経験できたおかげで、佼成ウインドの奏者の皆さんがそれぞれに特有のストレスを抱えていることが想像できるのです。

楽団員の休日を調整する時、それぞれの仕事の立て込み具合や佼成ウインド以外の音楽の仕事なども考慮するのですが、この貴重な経験によって一人ひとりの思いをより深く聞き取らせて頂くこともできるのではないかと思っています。そうやって信頼関係が築けたおかげで、事務所側から提案されたことも快く受け入れてくれるといった有り難いことがたくさんあります。

プロフィル

ほり・ふうか 1988年、福岡・北九州市に生まれる。2006年に武蔵野音楽大学音楽学部器楽学科を卒業後、10年、第1回日本ホルンコンクールで第5位入賞。ホルンを須山芳博、丸山勉、室内楽をK.ベルケシュ各氏に師事するとともに、シュテファン・ドール、ブルーノ・シュナイダー両氏のマスタークラスを受講。14年1月より東京佼成ウインドオーケストラに正式に入団した。