TKWO――音楽とともにある人生♪ 指揮・大井剛史さん Vol.3

TKWO創立60周年の抱負

――佼成ウインドの正指揮者となって、何か変わりましたか?

楽団にとって正指揮者の存在というのは大きいと感じます。さらに、佼成ウインドは、日本トップレベルの吹奏楽団であり、注目される楽団ですから、その正指揮者は吹奏楽界でも影響力が大きい立場だと認識するようになりました。また、団員の演奏レベルが高いということは、楽団の演奏に対するこだわりが強いわけですから、当然指揮者に求められるものも高くなります。良いオーケストラの全てに共通する要素ですね。

佼成ウインドはチームとして、すごく柔らかい雰囲気があります。それは、それぞれの演奏に求める厳しさがあって、その厳しさを全員が共有し、互いに理解し合っているからこそ、あのように柔らかくいられるのではないかと感じています。厳しさと柔らかさを兼ね備えた楽団の正指揮者になることは、うれしくもあり、プレッシャーを感じるものでもありました。

また正指揮者に就任し、「見られ方」の変化と言うのでしょうか、どこにいても、佼成ウインドの指揮者として見られるようになりました。他の団体の指揮を務める演奏会でも、音楽について何かを発言する時でも、佼成ウインドの正指揮者はこういう指揮をして、こういうことを話すのか、という看板が常に付いています。全国の吹奏楽に取り組む指導者の先生や、学生、アマチュアの奏者からも注目されるようになり、電車に乗っていると「大井さんですか?」と声を掛けられます。これまでさまざまな団体で指揮を務めましたが、見ず知らずの方から電車で声を掛けられたことはありませんでした(笑)。

――今年、佼成ウインドは創立60周年を迎えます

楽団として、とても良い状態で60周年を迎えられたと自負しています。ここしばらくの間に、多くのメンバーが入れ替わり、現在は世代交代が一段落し、安定していると言えます。団員の皆さんの体力、気力共に充実していて、パワーがとてもあります。60周年を機に、佼成ウインドの存在をこれまで以上に、より多くの方に知ってもらえる良いタイミングだと思います。2020年は私たちの魅力を存分に伝えられる演奏の機会が多くありますので、記念の年に恥じないような演奏をしたいと意気込んでいます。

――大井さんご自身としては、どうでしょうか?

今年で正指揮者に就任して7年目になります。佼成ウインドとの仕事がこれまでで最も多い年で、密度の濃い一年になりそうです。正指揮者としての役割をきちんと務めなくてはならないと、身の引き締まる思いでいます。

後年、僕の指揮者人生を、あるいは佼成ウインドの正指揮者としての期間を振り返った時に、2020年は一つのハイライトになるのではないかと思っています。11月には「吹奏楽のための第一組曲」を指揮します。フェネルさんが振った時のことを私が今も覚えているように、聴いてくださるお客さまにとって、団員にとって、僕自身にとっても、忘れられない演奏会となることを目指しています。今年は、これまで以上に力を尽くし、大切な年をより良いものにしていきたいですね。

プロフィル

おおい・たけし 1974年、東京都生まれ。17歳より松尾葉子氏に師事し指揮法を学ぶ。東京藝術大学指揮科、同大学院指揮専攻を修了。仙台フィルハーモニー管弦楽団副指揮者(2000~01年)、ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉=現・千葉交響楽団=常任指揮者(09~16年)、山形交響楽団指揮者および正指揮者(09~17年)を歴任。チェコ・フィルハーモニー管弦楽団で研修。アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクール第2位入賞。現在、東京藝術大学音楽学部器楽科非常勤講師(吹奏楽)、尚美ミュージックカレッジ専門学校客員教授でもある。